ケースワーカーは誰の味方なのか? 『健康で文化的な最低限度の生活』吉岡里帆の苦しい選択

『ケンカツ』ケースワーカーとは誰の味方なのか 

 そんな七条は、えみるが日下部家へ徴収の旨を伝えるべく訪問する時に同行してくれる。「(高校生である欣也に)世の中の厳しさを教えてやるか」などとひょうひょうと口にしながらも、日下部家の中へ1人で向かうえみるの後ろ姿を見つめる瞳がなんとも優しい。演じる山田といえば、公開中の『虹色デイズ』では、寂しがり屋の妹(恒松祐里)をいつも気にかける兄・筒井昌臣役を好演。短い出番ながら、妹を大切に想う兄像と、青春物語を一気に勢いづける存在として、彼よりさらに若い俳優陣を支えるポジションを担った。今作でも、そんな頼れる一面を垣間見せているだけに、マザコンというギャップがまた愛らしい。

 さて、七条から少しの勇気を得て、単身、日下部家で聡美と欣也に対峙するえみるだが、「バイト代を何に使ったのか」と、聡美は欣也の部屋の押入れを強引に開けてしまう。そしてそこから溢れ出てきたのは、大量のCDに、アンプやスピーカー、そして欣也の想いが歌詞としてしたためられたノートなどである。欣也は「馬鹿で貧乏な人間は、夢見んなってことかよ」と叫び、自らのギターを叩き壊してしまい、異常を察した七条は屋内へと駆け込んでくる。えみる、万事休すだ。

 欣也を演じる吉村といえば、この手のポジションにいま最もハマる俳優の1人だろう。彼が終始見せるイラ立ちの表情は、多くの共感を生んでいるのではないか。次週は、そんな吉村演じる欣也と、吉岡演じるえみるの“闘い”が見ものとなりそうだ。えみるは彼らに、どのような寄り添い方をするのか。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■放送情報
『健康で文化的な最低限度の生活』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:吉岡里帆、井浦新、川栄李奈、山田裕貴、小園凌央、水上京香、安座間美優、谷まりあ、鈴木アメリ、内場勝則、徳永えり、田中圭、遠藤憲一ほか
原作:柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:矢島弘一、岸本鮎佳
監督:本橋圭太、小野浩司
プロデュース:米田孝(カンテレ)、遠田孝一(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)、本郷達也(MMJ)
制作協力:メディアミックス・ジャパン
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/kbss/index.html

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