豊川悦司が永野芽郁に施した“解放” 『半分、青い。』が描く創作の苦しみ

豊川悦司が永野芽郁に施した“解放”

 とはいえ、鈴愛はそれでもまだ自分の漫画家としての至らなさを実感している。「先生は本物の刀で人の心を斬る」「私は偽物の刀しかない」。「心から血が流れる」ほどの漫画が描けないのだと。第80話の終盤、祖父の仙吉(中村雅俊)に電話をかけた鈴愛は、思わず「あかんかもしれない」とつぶやく。昔の、純粋に漫画を描くことが好きで仕方がなかった鈴愛に完全に戻れたかというとそうではないのであろう。しかし、失意に沈む鈴愛に、仙吉はそれでも「御の字」だと励ます。そしてこう続ける。「人間は強いぞ。鈴愛はことのほか強いぞ」と。そしてラストシーンでは、仙吉が得意のギターを使って、「あの素晴らしい愛をもう一度」を弾き語り、思わず鈴愛は涙する。ここしばらくふさぎこんでいた鈴愛の人生に光が差し始めたのを思わせるシーンであった。

 子供の頃から猪突猛進型の性格であった鈴愛。彼女は漫画と出会うことで、また一つ強くなり、大人にもなった。鈴愛は秋風と出会っていろいろなことを学んできたが、それらがこれからの人生でどのような形で糧となっていくのか。今後も繰り広げられるであろう、七転び八起きの鈴愛の人生を追っていきたい。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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