ディーン・フジオカの計画は成功だったのか? 『モンテ・クリスト伯』“復讐”の悲しき結末

『モンクリ』復讐は成功だった?

 別荘にいたすみれたちを解放した真海は、「楽しかった……」とつぶやきながら復讐劇とモンテ・クリスト・真海の人生に幕を閉じる。しかし、“大切なものを壊す”ことを軸に復讐を進めてきた彼の計画は、100%成功だったのかは不明だ。ターゲット3人の名声と家族を再起不能まで壊した真海だったが、彼が最後に海を見つめていた瞳には、どこか寂しさが宿っていたように感じる。

 復讐が完了した今思うのは、真海が計画を進める中で自身も傷ついていったということだ。真海はターゲットの男3人を社会的に抹殺したが、暖時代に大切にしていた幸せまでは取り戻せなかった。さらに、完全に心が壊れてしまった入間以外は相変わらずで、散々痛い目にあっても人間の根底に眠る憎悪は拭い去れていない。むしろ幸男と神楽の暖への嫌悪感は倍以上にも膨れ上がっていたように思える。もちろん真海は暖を取り戻すために計画を遂行していたわけではないが、人を傷つけた彼の手は相手の血ですっかり汚れ、美しき復讐劇の結末は虚しい空気が漂っていた。

 それにしても本ドラマは、最後まで瑛理奈役の山口紗弥加と留美役の稲森いずみの怪演ぶりが見ものだった。両者とも息子への愛を異なったベクトルで表現していたが、最終話で目を見開いて真っ赤に染まったトマトを含んだ瑛理奈の口から、鮮血が豪快に溢れ出るシーンはもうホラー映画の粋。生き残った瑛理奈の息子が、母の仇を打つために真海に復讐するスピンオフすら見てみたい。

 また、真海は留美を誤算だと言っていたが、暖のときから彼はずっと愛に翻弄され続ける運命にあるのではないかと思う。そんな彼を最後に包み込んだのは広大な海だった。海はあらゆる生命体の原点であるゆえ、漢字の中には“母”の文字が入っている。船で遭難しても帰還し、投獄されても海を渡って生還と、思い返してみれば海に愛されてきた真海。最後に彼は第2の母である海に戻り、一途に愛してくれた女性と新たな人生を歩もうとしていた。どうか今度こそは海よりも広く深い愛情を掴むことを願いたい。

(文=阿部桜子)

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■放送情報
木曜劇場『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』
出演:ディーン・フジオカ、大倉忠義、山本美月、高杉真宙、葉山奨之、岸井ゆきの、渋川清彦、桜井ユキ、三浦誠己、新井浩文、田中泯、風吹ジュン、木下ほうか、山口紗弥加、伊武雅刀、稲森いずみ、高橋克典
原作:アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』
脚本:黒岩勉
プロデュース:太田大、荒井俊雄
演出:西谷弘、野田悠介、永山耕三
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/MONTE-CRISTO/

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