鈴木亮平と尾上菊之助、“夫婦”のような互いへの思い 『西郷どん』美しすぎる入水

 『西郷どん』(NHK総合)第17回「西郷入水」は、西郷吉之助(鈴木亮平)と月照(尾上菊之助)が冬の海へと身を投じるという衝撃的なラストで幕を閉じた。死を覚悟した2人が心をひとつにし、“長い旅路”へと向かおうとするその姿には、ある種の美しさも覚えた。吉之助はこれまで、島津斉彬(渡辺謙)、大久保正助(瑛太)、篤姫(北川景子)など、様々な人物と特別な関係にあった。最期をともにしようとする月照ともまた、信頼し合う特別な関わりだったと言える。

 命を賭けて支えた斉彬を亡くし、ショックのあまり憔悴しきる吉之助へ声をかけたのが月照だった。涙一つ流すことのない吉之助を見て、月照は薩摩に帰り死ぬつもりでいることを言い当てる。生きることが斉彬の思いを継ぐことであり、吉之助の中には斉彬の遺志が詰まっていることを月照は教える。大老・井伊直弼(佐野史郎)による政治弾圧「安政の大獄」によって、一橋派は断罪の対象となり、吉之助は月照を薩摩へと匿うことを決意する。幕府に身を預けようとしていた月照を止め、ともに薩摩へ向かうことを願う吉之助の目には、力強い眼差しが戻ってきていた。命を賭して守ると宣言する吉之助に、月照もその命を預けると伝える。京都から薩摩に向かう険しい道中、幕府の手から必死に身を守る吉之助に、月照は強い信頼を寄せていったはずだ。

 しかし、薩摩の地にも、幕府の魔の手は近づいていた。薩摩藩の政策転換により、吉之助と月照は“日向送り”、つまりは死刑を宣告される。数百里という長い旅路の末に、吉之助は幕府から月照を救うことができなかった。そんな死が近づいているときにでも、月照は変わらず「私の命はとうに預けてますよ」と固い絆を示す。心が同じ方向を向き、互いに命を預け、ともに歩んだ2人。月照を演じた尾上菊之助は、公式サイトのインタビューでその関係を“夫婦”と例えている。

 入水自殺を図る舟の中で、月照は「心がは死ぬと決めていても、体が生きよう、生きようとして震えます」とこの世への未練を吉之助へと打ち明ける。「大君のためには何かをしからん 薩摩の追門に身は沈むとも」という辞世の句が、月照の無念をありありと伝えている。そんな月照の心中を知り、吉之助は舟の先端で「ともに参ります」と月照の手を強く握り、優しく抱き寄せ、海へと身を投じるーー。

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