渡辺謙、死してなお鈴木亮平を導く 『西郷どん』“最後の抱擁”に視聴者涙
慶喜と同じく共闘を続けてきた左内にも幕府の手が忍び寄る。「諦めた」と吉之助に告げた慶喜に対して、左内は「病んだこの国の医者になるために生きてきたのです。この国の仕組みを是が非でも変えたかった。僕はまだ何一つとして諦めていません」と吉之助に語る。左内と吉之助、ふたりの置かれている状況は茨の道にも関わらず、それでも国を変えるために、民のために前だけを見据える。この直後、死という絶望が待ち受けているだけに、吉之助に向けた左内の最後の笑顔があまりにも切なかった。鈴木亮平よりも小柄な風間俊介だが、その身体が見劣りしないほど大きな存在感を放った一幕だった。
幕府に捕らわれてしまった左内と同様に、薩摩へと向かう吉之助と月照にも追っ手が迫る。吉之助は険しい道中の途中、斉彬の元へと“死”に引き寄せられていく。そんな吉之助の想いを察したのか、そこに現れたのがまさかの斉彬。斉彬に心酔し続けた吉之助の妄想か、それとも幽霊か。「お前は一体何を学んできたんだ」と斉彬は吉之助を激励。吉之助はその胸の内に飛び込むも、斉彬はその瞬間に消えてしまう。斉彬の意思を吉之助が受け継ぎ、その死を受け入れた証だ。斉彬へ向けて吉之助が送った最後の言葉「あいがとございもした!」は、鈴木亮平が自ら考えたものであることが「週刊 西郷どん」で明かされている。吉之助として、役者として、渡辺謙への偽りのない心からの気持ちが溢れ出ていた。
もう一人の主役と言われた斉彬の退場によって、吉之助の担う役割は次週以降ますます大きくなっていく。激動渦巻く幕末を乗り越え、吉之助はどう成長していくのだろうか。
(文=石井達也)
■放送情報
『西郷どん』
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
出演:鈴木亮平、瑛太、松田翔太、風間俊介、高橋光臣、堀井新太、尾上菊之助、近藤春菜、国広富之、佐野史郎、渡辺謙ほか
原作:林真理子
脚本:中園ミホ
語り:西田敏行
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/segodon/