4月から東宝作品の公開日が金曜日に 日本映画を取り巻く「世界基準」と「日本の風土」

日本映画を取り巻く世界基準と日本の風土

 こうなってくると、毎週発表されている「土日2日間の動員ランキング」にも見直しが迫られるだろう。アメリカをはじめとする、新作が金曜日に公開される日本以外の国では「週末成績」といえばもちろん金曜日から3日間の成績のこと。そして、動員の数字ではなく興収の数字によってランクが決められる。「それはそれ」として、このまま変わらないのかもしれないが。

 思えば、毎年4月に公開されるシリーズ22作目のアニメ作品が1位で、同じ日に公開される同配給会社のシリーズ26作目のアニメ作品が2位という今週のランキングは、あらゆる側面において日本の映画興行の特殊性が顕著に表れている。ハリウッドではここ数年、観客が「続編疲れ」を起こし、シリーズものの成績が全体に下降傾向にあるが、それとはまったく逆に日本では、ここにきて毎年のようにシリーズ作品の最高記録が更新されている。結局のところ、日本は『男はつらいよ』(配給会社は違うけれど)の国ということなのだろうか。まるで季節の風物詩のように、「春になれば『ドラえもん』」「ゴールデンウィークが近づけば『名探偵コナン』」と、多くの観客が劇場に押し寄せる状況がずっと続いている。今後、外国映画との数字の比較がこれまで以上にガチンコで可能となったわけだが、ここにきての金曜公開への移行は、それでもビクともしない東宝の余裕の表れなのかもしれない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『名探偵コナン ゼロの執行人』
全国東宝系にて公開中
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:立川譲
脚本:櫻井武晴
音楽:大野克夫
配給:東宝
(c)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:http://www.conan-movie.jp/

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