『ちはやふる -結び-』ヒットの理由ーーキャストや監督らの絶妙なバランスが“奇跡”生む

『ちはやふる -結び-』ヒットの理由

 彼らは、既存のメンバーたちに多くの“気づき”を与える役目を担う一方で、それぞれもしっかりとした見せ場があり、ただの引き立て役ではない。特に賀来が演じる周防は、独特のキャラクターであり、芝居のさじ加減によっては大きく作品の世界観を崩しかねない存在なのだが、偉大さと脆さ、重厚さと滑稽さという、相反する感情を見事なまでのバランスで表現している。

 小泉監督も「キャラクター付けには相当悩んでいるようでした」と現場での苦悩ぶりを語っていたが、舞台をはじめとする福田雄一監督とのタッグで、瞬発力系の演技の引き出しを増やしてきた賀来にとって、多面性を持つ周防という役柄は、非常にやりがいのある役だったのではないだろうか。実際、周防の動きによって、物語は大きなうねりをみせ、彼が作品を支配する瞬間もあった。

 こうしたキャラクターたちが、出たり引いたりしながら、120分の物語は、大きなクライマックスを迎える。キャラクターへの愛情いっぱいの脚本、そこに命を吹き込んだ若くていきがいい俳優たち、それをさらなる愛で包み込む監督……この絶妙なバランスが、奇跡的な完結編を生み出しているのだろう。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■公開情報
『ちはやふる -結び-』
全国東宝系にて公開中
出演:広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、清水尋也、優希美青、佐野勇斗、清原果耶、松岡茉優、賀来賢人、松田美由紀、國村隼
原作:末次由紀『ちはやふる』(講談社「BE・LOVE」連載)
監督・脚本:小泉徳宏
企画・プロデュース:北島直明
プロデューサー:巣立恭平
(c)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (c)末次由紀/講談社
公式サイト:http://chihayafuru-movie.com/

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