『海月姫』原作を再現する“以上”の質でフィナーレを飾る 芳根京子の次なる演技にも期待

『海月姫』原作再現“以上”の質でフィナーレ

 天水館から出ていくことになった“尼〜ず”の5人。そのままバラバラになるのかと思いきや、結局ネットカフェで5人一緒に生活をしていた彼女たち。そんな中「ジェリーフィッシュ」を解散することを宣言した鯉淵蔵之介(瀬戸康史)に対し、倉下月海(芳根京子)は最後に“尼〜ず”のみんなが着たい服を作ってファッションショーをすることを思いつくのだ。

 3月19日に放送された月9ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)は、これまでハイテンションで駆け抜けてきたこのドラマの大団円に相応しい、見事なフィナーレを飾ったといってもいいだろう。“尼〜ず”全員がランウェイを歩く鮮やかなファッションショー、“ノムさん”(安達祐実)や“ニーシャ”(江口のりこ)など強烈ゲストキャラの再登場、そして月海と鯉淵兄弟の三角関係に稲荷翔子(泉里香)も加わり、蔵之介と母親との物語もすくい上げていく。

 若干詰め込みすぎのような雰囲気も感じさせないのは、これまですべてのエピソードが圧倒的な密度で進んでいたからに他ならない。すっかりテレビドラマは10話完結が主流になってきているが、おそらく12話になっていてもかなりの密度だったに違いない。それだけの量のエピソードや笑いの要素が、ぎゅっと濃縮された印象を受ける。

 その濃度を高めてきた個性の強いキャラクターたちがテンポの良い掛け合いを炸裂させてきた本作。最終話でも稲荷は予想外の可愛らしさを発揮し(しかも最後の最後でまさかのオチを飾るという)、花森よしお(要潤)は安定のボケを連発。2人が徹底的にかき回していく中で、期待通りにさりげなく登場した目白先生(滝藤賢一)もコメディーリリーフとして大健闘をみせた。

 さて、このドラマが始まると発表されたときから注目していたことは、ここ最近他のドラマ枠に押され気味となっていたフジテレビ連ドラの看板枠“月9”が復権を遂げるのか否か。そして主人公・月海を演じる芳根京子が初めて挑むコメディー演技でさらにパワーアップするかどうかという点だった。

 前者は判断が非常に難しいところではあるが、大成功とまでは呼べないのが正直なところだ。ここ最近は録画やタイムシフト視聴が主流になっているだけに、視聴率が直接的に結びつかないとはいえ、先週の第9話までで平均6%強というのは少々寂しい数字だ。それでも、作品の評価自体は決して悪いものではなかったことは忘れてはいけない。それを支えたのは、“全員コメディーリリーフ”という破綻しかねないスタイルをうまく捌き、原作を単に再現する“以上”の作品を目指したからだろう。

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