深田恭子、視聴者の心に訴えかける苦悩の表情 『隣の家族は青く見える』の演技を読む
聡子と2人きりになったとき、奈々は聡子に事情を話した。聡子は「子供を待ち望んでいる私たちのために、なんて考えなくていいからね」と奈々を励ます。このとき、奈々の口から溢れた言葉は「すみません」なのだ。もちろん、これは誰のせいでもないことで、謝る必要なんてない。当然聡子も「謝らなくていい」と言うが、奈々の口からこぼれ落ちた「すみません」は、彼女の苦悩がもう抱えきれないことを表している。奈々本人も謝る必要がないことは分かっているはずだが、彼女のこの一言は、不妊治療の大変さを物語っていた。このシーンでの深田の演技は、不妊治療に励む人の心に寄り添っただけでなく、すべての視聴者の心に訴えかけたことだろう。
奈々は、他の登場人物と違って感情をあまり表に出さない。周りの人の悩みに寄り添い、話を聞いてあげる優しい女性だが、自分の悩みは限界に達するまで抱え込んでしまう。世間の不妊治療への理解は深まっているとは思うが、奈々のように、誰にも相談できず、全てを背負い込んでしまう人も少なくないだろう。回を追うごとに奈々の笑顔が少なくなっていく。どのような結末だとしても、奈々の笑顔を見ることができる最終話になってほしい。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
木曜劇場『隣の家族は青く見える』
フジテレビ系にて毎週木曜22:00から放送
出演:深田恭子、松山ケンイチ、平山浩行、高橋メアリージュン、北村匠海、眞島秀和、真飛聖、野間口徹、伊藤かずえ、高畑淳子、橋本マナミほか
脚本:中谷まゆみ
プロデュース:中野利幸
演出:品田俊介、高野舞
制作:フジテレビ第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/tonari_no_kazoku/