『アンナチュラル』は日本のドラマ界を先導する傑作だ 第1話から驚くべきクオリティー
先が読めない気持ちよさ
高野島の死因は、感染すれば死に至る可能性があるMERS(中東呼吸器症候群)だった。亡くなる数週間前に、海外出張に行っており、そこで感染したらしい。さらに、帰国後健康診断に行っていたため、もうすでに日本にウイルスが出回っていた。感染拡大を防ぐため、UDIラボは世間にMERSコロナウイルスの上陸を発表する。
メディアやSNSからバッシングを受ける高野島の両親。納得のいかない死因を究明しようとしたために、世間から怒りを浴びることになってしまった。しかし、ウイルスの上陸がこのまま発覚していなかったら、莫大な数の感染が確認されていただろう。多くの人を救命する死因究明は、時に誰かを傷つけることもあるのだ。
……が、死因究明の二面性にハッとさせられたのもつかの間。帰国後、高野島と甘い時間を過ごした馬場の体はウイルスに侵されていないことに気付く。つまり高野島が感染した場所は、健康診断を受けた病院。病院は、MERSコロナウイルスに感染した患者がいることを3か月隠蔽し続け、亡くなった高野島に濡れ衣を着せていた。
もうここまで展開が変わってくると、「馬場が怪しい」と思っていた数十分前の自分の浅はかさが恥ずかしくなる。死んだものに無実の罪を着せても釈明できないという意味で「死人に口無し」ということわざがあるが、ミコトたちにそれは通用しない。UDIラボの活躍により、死者の名誉と生きた人間の命が守られた。
1話完結とはいえ、最終話へ向けての伏線が各話に散りばめられているそう。UDIのメンバーが抱える過去の闇や、ミコトの恋愛事情、中堂が葬儀屋と話していた“赤い金魚"など、まだまだ明かされていないことはたくさんある。
テレビ番組は、いまやインターネットで見逃し配信される時代で、リアルタイムで視聴するスタイルは、今やオールドファッションになりつつある。人々は自分のペースで娯楽に向き合うようになってきているが、久しぶりにテレビの前で待機していたいと思えるドラマが生まれた。
(文=阿部桜子)
■放送情報
金曜ドラマ『アンナチュラル』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜放送
出演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、池田鉄洋、竜星涼、小笠原海(超特急)、飯尾和樹(ずん)、北村有起哉、大倉孝二、薬師丸ひろ子(特別出演)、松重豊ほか
脚本:野木亜紀子
プロデューサー:新井順子(ドリマックス・テレビジョン)、植田博樹
演出:塚原あゆ子(ドリマックス・テレビジョン)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/unnatural2018/