年末企画:児玉美月の「2017年 年間ベスト映画TOP10」 映画作家たちが才能と美学を忌憚なく発揮
8位は『ブレードランナー 2049』が記憶に新しいドゥニ・ヴィルヌーヴが、映像ならではの表現を巧みに操り形而上学的なテーマを高尚に描いた『メッセージ』。
続く9位は“おれたちのエドガー・ライト”として親しまれるエドガー・ライトの『ベイビー・ドライバー』。音楽と映像のシンクロとスペクタクルな展開に多くの観客が熱狂した。
10位は今年のアカデミー賞で見事作品賞を勝ち取った『ムーンライト』だが、今年は同作以外に秀逸なクィア映画(LGBT映画)が見当たらなかった。賞レースを牽引している『君の名前で僕を呼んで』の公開が待つ2018年に期待したい。
また、クィア映画の中でも近年トランスジェンダーをテーマにした映画の勃興がめざましい。今年も全編iPhoneで撮られた『タンジェリン』や、日本では生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』、ドキュメンタリー作品『恋とボルバキア』が公開された。この潮流は、2018年も『アバウト・レイ 16歳の決断』、『ナチュラルウーマン』を筆頭に引き継がれていく。映画は声なき者を可視化させる格好のメディアである。同テーマの作品が数多く受容されることを願う。
TOP10で取り上げた作品のレビュー
・白石和彌監督『彼女がその名を知らない鳥たち』の“鳥”が意味するものーー驚くべき二面性を読む
・“男女”と“車”に“音楽”を融合ーー『トゥルー・ロマンス』の精神受け継いだ『ベイビー・ドライバー』
■児玉美月
現在、大学院修士課程で主にジェンダー映画を研究中。
好きな監督はグザヴィエ・ドラン、ペドロ・アルモドバル、フランソワ・オゾンなど。Twitter
■公開情報
『ノクターナル・アニマルズ』
公開中
脚本・監督:トム・フォード
出演:エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー、ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン
原作:「ノクターナル・アニマルズ」(オースティン・ライト著/ハヤカワ文庫)
2016/アメリカ/116分/PG-12/ユニバーサル作品
配給:ビターズ・エンド/パルコ
(c)Universal Pictures
公式サイト:http://www.nocturnalanimals.jp/