まさに「2017年的な映画」 『20センチュリー・ウーマン』が指し示した映画の未来

宇野維正『20センチュリー・ウーマン』評

 「今の時代、自分のような白人で、中年で、ストレートで、それなりに社会的地位のある男が主人公の映画を作っても、誰も観たくないんじゃないかな」。マイク・ミルズが言うように、ここ数年でハリウッドが製作する作品の主人公は、女性や有色人種の割合が目に見えて増えてきた。主演俳優の出演料の格差など、まだ解決すべき問題はたくさん残されているが、今年発覚したワインスタイン・スキャンダルに端を発するハリウッドのセクハラ問題を受けて、その動きは今後さらに加速していくだろう。しかし、我々特に男性が見落としがちなのは、これまでだって女性の観客たちは、映画の中のヒロインだけでなく、映画の中のヒーローに、男性と同じように自己を投影してきたということだ。

 ステージの上に立っていた女性ミュージシャンこそ限定的ではあったが、パンク/ニュー・ウェーブのシーンでは常に女性が重要な役割を果たしてきたこと。ハンフリー・ボガートのような男に愛されるのではなく、ハンフリー・ボガートのようになりたかった主人公。一つひとつはささいなエピソードではあるが、声高に何かを主張するのではなく、そうしたエピソードを丁寧に積み重ねていくことで、一つの大きな現実を浮き上がらせていく。『20センチュリー・ウーマン』の素晴らしさは、そこにある。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■リリース情報
『20センチュリー・ウーマン』
12月6日(水)DVD発売
価格:3,800+税
ディスク:本編1枚
仕様:本編119分

【本編】片面二層/カラー/16:9ビスタ/音声:1.英語ドルビーデジタル5.1ch、2.英語ドルビーデジタル2.0ch、3.オーディオコメンタリー/字幕:1.日本語字幕

<特典>
・マイク・ミルズ監督オーディオコメンタリー
・マイク・ミルズ監督来日インタビュー映像
・マイク・ミルズ監督/キャストインタビュー映像
・オリジナル予告編
・日本版予告編

監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ
提供:バップ、ロングライド
発売元・販売元:バップ
2016年/アメリカ/英語/119分/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/原題:20TH CENTURY WOMEN/日本語字幕:髙内朝子/PG-12/サウンド・トラック:ワーナーミュージック・ジャパン
(c)2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://20cw.net/

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