『わろてんか』、鈴木京香演じる啄子がアメリカへーー風鳥亭への功績を振り返る
10月に放送を開始した『わろてんか』(NHK総合)が、もうすぐスタートから2カ月が経とうとしている。第8週「笑売の道」は、放送開始から一番のターニングポイントとなる週。藤吉を演じる松坂桃李も自身のTwitterにて、「色んな人にとっての山場がやってきます」「これは作品的にも山場かもしれません」と綴ったほどだ。開業から1年が経った風鳥亭は経営も軌道に乗り、てん(葵わかな)と藤吉は、ついに祝言を挙げる。ここまでくることができたのは、2人の笑いへの情熱、惜しみない努力と機転があったのはたしかだが、その支えにはご寮さんとして、そして母としての啄子(鈴木京香)の姿があった。
第8週の始まりは、風鳥亭の開業から3カ月の頃の話。啄子はてんと藤吉に「このままだと京都のお父さんへの借金も返しきれんし、北村も宙に浮いたまんまや」とつぶやく。風鳥亭は思うように売り上げが伸びず、このままでは藤岡屋から借りた五百円も返済する見込みが立たない。ましてや、風鳥亭から「北村」の名をつけた店に改名することなど程遠い話だった。見かねた啄子は、ついに風鳥亭の半纏に袖を通し、寄席の手伝いを始めるのだった。
北村屋のご寮さんとして商いをてんに教えてきた啄子は、家訓「始末、才覚、算用」を改めて復唱させる。目先の儲けを考えて、客の信頼を失う。風鳥亭の客足が伸びない原因はここにあった。商いには信用が何よりも大事。てんが客の汚れた下駄を磨き、切れそうな鼻緒を付け直す。これも啄子が北村屋で大事にしてきた客との信頼関係にあるものだった。さらに、藤吉と伊能(高橋一生)を東西屋として、練り歩かせ女性客を掴み、そのことをきっかけに昼興行にも踏み切ると新たな客層が寄席に足を運ぶようになった。てんが木戸銭を五銭にすることを提案した時も、それを後押ししたのは啄子。「どこに商いの勝機があるか見極め、誰もやっていないことをやる」ーーまさに家訓にある「才覚」そのものだ。啄子の発想の突飛さ、商いは、てんにしっかりと受け継がれていた。
てんは亡くなった儀兵衛(遠藤憲一)から借りた五百円を返済し、無事祝言を挙げ、風鳥亭から「北村笑点」へと、北村の名を掲げた店名をつけた。一周年記念興行には、儀兵衛の写真を持ったしず(鈴木保奈美)の姿が。しずは「ありがとうございました。あの子を仕込んでくださって」と啄子に挨拶したが、これは以前にしずが北村屋へと面会に来た際のセリフにかけたものだ。しっかりと仕込まれたてんは啄子から、「あんたに『人は財なり』ちゅうことを教えてもらいましたんや。免許皆伝や。あんたは、この寄席の立派なご寮さんや」と誉めの言葉をもらう。女中から始まったてんの女修行は、ついにご寮さんへとたどり着いた。祝言を挙げたてんが啄子を「お義母さん」と呼ぶのも感慨深いものがある。