フジテレビはなぜVR事業に挑戦するのか? Fuji VR・北野雄一氏が語る、VRの本質とその可能性

フジテレビがVR事業に挑戦する理由

「技術の本質を捉えながら発想を広げていく」

ーー実写のVRでは、どのようなコンテンツが普及の鍵になると思いますか?

北野:ライブやスポーツを撮るのに、メインステージで自由に動き回れるカメラがあると表現の幅が広がるので、演出や競技との兼ね合いの中、VRカメラマンやドローンがどこまで食い込んでいけるかが、ひとつの鍵になると思います。もちろん技術革新によって可能になる部分が大きくあると思います。

 バックステージものにも、まだやられていない色々な可能性があり、そこでのファンコミュニティにおいて、VR空間でのコミュニケーションを可能にするプラットフォームにも期待しています。また、視聴覚以外の情報と組み合わせることで、さらにリッチな体験を提供することもやってみたいです。前述の「日本大相撲トーナメント」では、配信の現場で、力士の鬢付け油の香りにその場にいるリアリティをすごく感じたんですね。嗅覚もひとつですが、五感のすべてを届けるにはどのようにしたら良いかをテーマに、考えていきたいと思っています。

ーー今後、VR機器が一般的に普及していくには、どんな課題があると考えていますか。

北野:VR機器の技術的な課題、たとえばデバイスのCPUや回線の問題は、近い将来解決されると信じていますが、コンテンツを作る側としてはその時々の技術と向き合い、ベストなコンテンツを見極めて、作り続けることが重要だと思います。VRやARの技術によって360度の空間情報を丸ごと伝送する新しいコミュニケーションの形が可能になりつつありますが、技術の本質を捉えながら発想を広げていくことで、価値のあるものを作っていきたいと思います。

 また、VRはエンターテイメントだけではなく、不動産、医療、教育、旅行など、他の産業と一緒になって、体験できる機会や消費の裾野を広げていくものだと思うので、他の産業の動向にも目を向けながら、「Fuji VR」にできることを模索しています。

ーーVRによって映画やゲームに代わる、新しいエンターテイメントの様式は生まれてくると思いますか。

北野:今のVRヘッドマウントディスプレイの原型を作ったアイバン・サザランドという科学者自身が、人間とコンピュータの対話における究極のディスプレイは、物体を自由にコントロールできる部屋だという概念を提唱しているんですが、たとえば映画にとっての映画館のような、VRを体験するためのインフラやインターフェースは、それこそ信じられないような形で進化をしていくものだと思っています。そうした流れの中で、新しいエンターテイメントの様式や表現が生まれてくる可能性は無限にあると思います。

(取材・文=編集部)

■参考情報
Fuji VR(総合デジタルプロデュース)
http://vr.fujitv.co.jp/

FOD VR(フジテレビのVRコンテンツ視聴アプリ)
http://vr.fujitv.co.jp/fodvr

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