見上げるほど巨大なゴジラが迫ってくる! 編集部の「PSVR」体験レポ
「PlayStation VR」(以下、PSVR)が発売されてから約2ヶ月。家庭で最先端のバーチャルリアリティ(以下、VR)を体験できるという触れ込みもあって、10月13日の発売と同時に即完売、市場では現在も品薄状態が続いている。その一方で、新たなVRコンテンツや新技術のニュースは連日のように取り沙汰されており、VRブームは加速の一途を辿っている。
そんな中、遅ればせながらリアルサウンド映画部でもPSVRを購入したので、VR体験をレポートしたい。
PSVRは、家庭用ゲーム機「PlayStation4」(以下、PS4)専用のバーチャルリアリティシステム。PS4に専用のヘッドマウントディスプレイを接続し装着することで、プレイヤーの360度を3D空間が取り囲み、ゲームなどの仮想世界に入り込んだような、バーチャルリアリティ体験を味わうことができる。
実際に映画『シン・ゴジラ』のVRコンテンツをスタッフが体験した。ゴジラが破壊している街を舞台に、身動きのとれない市民Aの視点で物語は進むのだが、前後左右見渡す限りに広がる廃墟、天井を見上げるように顔を上げないと全体像を確認できない巨大なゴジラ、そんな超巨大生物がじわりじわりと近づいてくる恐怖……頭では仮想現実とわかっていながらも、よくできた作り込み具合に体が反射的に身構えてしまう。
すでに言われていることだが、これまでの映像コンテンツとVRの大きな違いは、圧倒的な“没入感”にある。ヘッドマウントディスプレイとイヤホンを装着することで日常からは切り離され、そこには現実世界の時間感覚もなく、目前に広がる仮想現実にのみ集中することができる。プレイステーション=ゲームと思いがちだが、PSVRについては映像コンテンツとしての革新性も高い。それに操作も直感的なので、非ゲーマーでも十分に楽しむことができるだろう。
映画版『シン・ゴジラ』でも、逃げ惑う人々の視点(POV)や、スマートフォンで撮影したような手ぶれ映像を使って臨場感を出していたが、あくまで他者の視点(カメラ)で捉えた映像であり、観客として見ている感覚だった。
一方、VRの直感的な視点移動は、現実世界でものを見る感覚と同じように、当事者になったような感覚が生じる。極端な話、見たくないものは目をそらして見ないという選択もできるし、プレイエリアの範囲内であれば顔を寄せて対象を間近で見ることも、お気に入りの部分をずっと観察することもできる。従来の映像コンテンツが持つ制限がクリアになったという感覚だ。
もう一本、試してみたのは『KITCHEN(キッチン)』という、『バイオハザード7』の一部から制作されたVR用技術デモだ。廃屋の一室で拘束状態の中、ゾンビのようなクリーチャーに襲われるというストーリーなのだが、これが実際に体験してみると非常に怖い。
まず、360度を取り囲む廃屋のリアリティがすごい。薄暗い照明による見通しの悪さや血の跡、物やゴミが散乱した床など、部屋に立ち込める不穏な空気が肌感覚で伝わってくる。そんな中、包丁を手に持った男が目と鼻の先にやってきたり、突然出てきたクリーチャーに襲われるのだから、自然と体が反応してしまう。また、様々な角度から音が聞こえてくるバイノーラル録音も、さらに恐怖感を助長する。
感覚としては従来のゲームというよりも、遊園地にあるようなアトラクション体験に近い。実際にユニバーサル・スタジオ・ジャパンや東京ジョイポリスでは、アトラクションとしてVRが導入されているが、今後はもっと増えていくのではないだろうか。さらに進化すれば、VRのなかで遊園地にいるような体験を味わえるゲーム、もしくは皮膚感覚や匂いを補助する周辺装置を実装した箱とVRだけのアミューズメント施設ができるかもしれない。