韓国版ゾンビ+鉄道パニック映画『新感染』はなぜ世界で絶賛された? ヨン・サンホ監督インタビュー
「韓国では作家主義の映画が多い」
ーー監督が考える「韓国映画らしさ」とは、どんなものでしょう?
サンホ:私は他の国の文化にあまり詳しくありませんが、ひとつ、韓国映画の特徴として挙げられるのは、やはり「監督中心の映画」が制作されているところではないかと。たとえばハリウッド映画だと、どうしてもスタジオ中心の企画や、有名な原作ありきの企画が多くなります。しかし、韓国では監督が自ら書いたシナリオを軸に、オリジナルのストーリーが作られることが多い。もっとも、以前に比べると韓国でも原作ものの作品などが増加傾向にあると言われているのですが、それでも他国に比べると、まだまだ作家主義の映画が多く、人々に支持されていると感じます。それに、たとえ原作がある作品でも、韓国映画の場合はそれに忠実に作るというより、いかにアレンジするかが重視されるので、そのままの作品になることはほとんどありません。
ーー最近では、『哭声/コクソン』や『お嬢さん』といった作品が、日本国内でもヒットしていて、韓国映画の勢いを感じています。監督自身は、昨今の韓国映画界をどのように見ていますか?
サンホ:これは長所でもあり短所でもありますが、韓国ではマーケティングの結果として、良質なロングラン・ヒット作品ではなく、短期間で一気に集客できる大作映画が主流になりつつあります。大作映画のバジェットと作家主義が結びついたからこそ、『哭声/コクソン』や『お嬢さん』といった素晴らしい作品が生まれたのも事実ですが、逆に言うと、新人の監督、あるいは中規模の予算・低予算の映画を撮っている人たちにとってはチャンスが少ない状況です。すでに名前が売れた監督しか、思うように映画を作れない状況であると言っても良いかもしれない。
ーー日本の映画やアニメーションで、影響を受けた監督や作品はありますか?
サンホ:私は日本の映画や監督が好きで、日本のアニメーションも大好きですし、日本の漫画もよく見ています。好きな監督は本当に大勢いますが、具体的に名前を挙げると、中島哲也監督、アニメーション監督の中では今敏監督も大好きでした。子どもの頃に影響を受けたのは押井守監督、大友克洋監督、宮崎駿監督。他にも、アニメーション監督の湯浅政明監督の作品は最近、興味深く観ています。今でも、それらの監督のファンとして作品を待っています。漫画家では、古谷実さんの作品をいつも楽しみに待っています。
ーー最後に、『新感染』がカンヌ国際映画祭で絶賛され、スティーヴン・キングを始め世界中の著名人も激賞していることについて、感想を教えてください。
サンホ:『新感染』のどんな要素が人気につながったのかにつ いては、私も常に考えていますが、おそらく登場するキャラクターが普遍的な人間の姿だったから、多くの方が共感し てくださったのではないかと思います。日本の映画ファンの方々にも、ぜひ楽しんでほしいです。
(取材・文=松田広宣)
■公開情報
『新感染 ファイナル・エクスプレス』
9月1日(金)、全国公開
監督:ヨン・サンホ
出演:コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソク
配給:ツイン
2016年/韓国/118分/英題:Train to Busan
(c)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.
公式サイト:shin-kansen.com