『ひよっこ』とうとう行方不明だった父と再会へ 第18週「大丈夫、きっと」を振り返る
みね子(有村架純)の心情を伝えるナレーションは「お父ちゃん」と優しく語りかけるように始まる。それは行方不明になった父、実(沢村一樹)をどんな時も、思っているということ。みね子が東京での出来事を手紙にしたためて、奥茨城に住む母の美代子(木村佳乃)に伝えるように、みね子の心の話し相手は常に実だった。
『ひよっこ』(NHK総合)、第18週「大丈夫、きっと」では、記憶障害によって記憶を失った実を巡る、世津子(菅野美穂)の思い、家族としての美代子、みね子の思いが描かれた。実に会いに行くため、美代子とみね子は世津子のマンションを訪れる。“東京の姉”である愛子(和久井映見)は出発前、「今日はお母さんだけ見てなさい」とみね子に伝えた。実際、美代子は実の妻として、谷田部家の母として、世津子に真摯かつ厳格な態度で向かった。普段は外していた結婚指輪を左手の薬指に、家族写真を鞄の中に携えた。記憶を失った実を説得する証拠と、女優である世津子に対する装備だ。
記憶障害になり雨の中ベンチにボーッと座っていた実に、世津子は声をかけた。それから2年間、実と世津子は生活を共にする。「初めて早く家に帰りたいと思った。生きてきて初めて」。世津子の中でいつしか、“雨男さん”と呼ぶ、実が大切な存在になっていた。結果として、誰も悪くはない。生きて会えてよかったという喜びと、「なぜ警察に連絡をしなかったのか」という疑問が交錯し、声を張り上げる美代子。しかし、実にとって、世津子は2年間面倒を見てくれた恩人だ。見知らぬ2人の女性が家族だといきなり現れ、今日から暮らすということ。世津子との2年間も実には大切なものであったに違いない。世津子は実との別れを覚悟し、準備していた彼の身支度の鞄と「もう二度と会うことはないでしょう。さようなら」という言葉を彼に渡す。実と目を合わせようとしない世津子の俯いた表情が、2年間につのった思いを物語っていた。
美代子は一人奥茨城に帰り、みね子と実の東京での生活が始まる。すずふり亭、あかね坂商店街、あかね荘……実は人の優しさに触れ、少しづつ自分を取り戻していく。記憶を失っていても、谷田部実であることに変わりはない。「大丈夫、きっと」。未来を見据えたみね子の、父を信じる思いがタイトルに現れている。