己を信じる大野智と、誰かを頼る知念侑李 『忍びの国』真逆キャラクターの面白さ
7月1日に公開された映画『忍びの国』が、好調な滑り出しを見せている。初週の土日動員は40万4500人、興行収入は4億8500万円。興行収入30億円も見込める幸先の良いスタートである。主演・無門(むもん)を演じるのは嵐・大野智。敵の総大将である織田信雄は、Hey! Say! JUMP知念侑李が務める。知念が大野に憧れているのはファンの間では有名な話。そんな2人の共演とあり、ジャニーズファンにとっても必見の映画だろう。
『忍びの国』の原作は、和田竜の小説。舞台は戦国時代。織田信長による天下統一が着々と進められており、次々と諸国が織田家に下っていた。しかし、唯一攻め入らなかった国がある。忍者衆が集う“伊賀国”だ。無門は伊賀随一の忍であるが、普段は怠け者で女房であるお国(石原さとみ)と夫婦の契りを交わすことすらできていない。伊賀の隣国・伊勢では、織田信長の次男・織田信雄が国を収めることとなっていた。信雄は伊賀を陥落すべく、伊賀に嫌気が差した伊賀忍者の下山平兵衛(鈴木亮平)を織田軍に加え、伊賀討伐へと踏み切った。圧倒的な戦力を持つ織田軍に立ち向かうため、無門率いる忍び軍団は想像を超える数々の秘策で織田軍に対抗していくーーというストーリーだ。
一見すると戦国時代劇のようにも思えるが、映画『忍びの国』は単なる時代劇ではない。血が流れるシーンはほぼ無く、コミカルなシーンの印象が非常に強い。かと思えば、スピーディーな殺陣やアクションがふんだんに盛り込まれた、圧巻の合戦シーンもある。言うならば、“時代劇エンターテイメント作品”といったところだろうか。これまでにありそうでなかったタイプの作品なのだ。
そして、“時代劇エンターテイメント”は大野の演技でも感じることができる。無門はどこか飄々としており、常に半笑いを浮かべている人物。命がけの戦いにも「よっ!」とおどけて登場してみたり、敵が想像と違う動きをすると「うそ!?」と驚いてみたり、セリフがいちいち漫画っぽい。金がなければ動かない、というキャラクター設定も漫画っぽさを引き立てている。しかし、お国に心動かされて伊賀を守るために織田軍との合戦に参加する後半からは、大野の表情が一転。だるそうな喋り方は変わらないが、無門が本気を出すにつれて大野もまた本気の顔つきになっていく。緩急の付け方が秀逸で、どことなく普段の大野のキャラクターとも重なる部分がある。
己の手腕だけで戦乱を生き抜く無門と正反対なのが、知念演じる織田信雄だ。そして知念の演技も、また良い味を出している。スクリーンの中にいるのは、何でもできてしまうスーパーアイドル・知念侑李ではなく、“甘やかされて育ってきたボンボン感”が溢れ出す織田信雄だ。プライドの高さや周りを自分の意のままに動かせるという奢りが、ひしひしとスクリーンから伝わってくるのだ。後先考えずに「伊賀に攻め入る」とわがままを言い、日置大膳(伊勢谷友介)に詰め寄られて思わず泣いてしまうのも、“ボンボン感”の極み。泣くのを我慢するがしきれない……という顔は絶妙であった。