橋本愛 × 永野芽郁 × 染谷将太、劇中バンドが面白い! 『PARKS パークス』音楽の魅力

『PARKS パークス』が描く2つの物語

 本作の監督を務めたのは瀬田なつき。これまで彼女は、木下美紗都、蓮沼執太、池永正二(あらかじめ決められた恋人たち)など、様々なミュージシャンを自作のサントラに起用し、音楽にはこだわりを持ってきた。そんな彼女が本作でパートナーに選んだのは、シンガー・ソングライターで映画音楽や舞台音楽も手掛ける鬼才、トクマルシューゴだ。もともと、瀬田はいちファンとしてトクマルの音楽を聴いていて、本作では脚本作りの段階からトクマルとアイデアを交換しながら物語を作りあげていった。それだけに映画には、たっぷりと音楽が染み込んでいる。

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 もちろん、「PARK MUSIC」はトクマル作。フォーキーな男女デュオの曲が、ラップをフィーチャーしたJ-POPソングへと変化していくあたりは、トクマルの腕に見せどころ。橋本のナチュラルな歌声を聴かせつつ、染谷が『TOKYO TRIBE』の時とは対照的に肩の力の抜けたラップを披露する。そして、曲が出来上がって行くにつれて3人の気持ちは変化していくが、なかでも大きく変化するのが純だ。

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 純は少女時代に子役としてテレビのCM出演して注目を浴びたものの、タレントとしてブレイクすることはなく、それ以降、何をやっても中途半端で投げ出してしまう。そんな純が一大決心をしてフェスに出ることがひとつのクライマックスになっているのだが、〈瀬田ワールド〉が炸裂するのはその先だ。フェスをきっかけに大きく変化する純の胸の内を、瀬田は現実と幻想を行き交うユニークな演出で描き出す。また、それまでにも、過去のエピソードが描かれるシーンで晋平と佐知子のやりとりを、すぐ横でハルが見守っていたりと、過去と現実の境界は曖昧で、時間も現実もスキップして越えていくような軽やかさが、物語にグルーヴを生み出している。公園を気持ちよく自転車で走り抜ける純。いつも開け放たれた純のアパートの窓から吹いてくる風。その心地良さは、まるで映画がハミングしているよう。

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 そして、そうした軽やかさをさらに引き立てているのが音楽だ。トクマルをはじめ、相対性理論、スカート、シャムキャッツ、高田漣、Alfred Beach Sandal、大友良英など、実に20組以上のアーティストがサントラに参加。一部のミュージシャンは映画に出演もしている。不思議なのは、これだけ様々なミュージシャンが提供した曲が、映画のあらゆるところに使われているのに音楽をうるさく感じないこと。音楽に登場人物の内面を語らせたり、ミュージック・ビデオのように音楽を際立たせたり、そういうありがちな演出を排して、音楽を映画のなかに自然に溶け込ませることができたのは、瀬田×トクマルのコラボレーションの賜物だろう。純、ハル、トキオが井の頭公園を駆け回りながらフィールドレコーディングするシークエンスは『はじまりのうた』を、ラストの公園を舞台にした手作り感溢れるミュージカル・シーンは『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』を思い出させたりもしたが、どちらの作品もミュージシャンとしてのキャリアがある映画監督が撮った作品。瀬田監督は純たち同様、楽器はひとつも弾けないそうだが、楽器を操るように映画を撮ることができる才能の持ち主である。

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