アメリカ・インディー映画の祭典はどこに行く? 岐路に立つサンダンス映画祭を徹底検証

アメリカ・インディー映画の祭典はどこに行く? 岐路に立つサンダンス映画祭を徹底検証

 今までサンダンス映画祭のアレコレについて紹介してきたが、こんなことを思う人もいるかもしれない。サンダンス映画祭が凄いとは聞くけど、日本に来るとしても公開はいつも1年2年先だし、所詮サンダンスなんて遠い世界の出来事だよ……と。しかし配信サービス、特にNetflixが映画祭と観客の遠すぎる距離を一気に狭めてくれていると断言していい。

20170202-Sundance-TheDiscovery.jpeg『ザ・ディスカバリー』20170202-Sundance-IDontFeelAtHomeInThisWorldAnymore.jpeg『この世に私の居場所なんてない』

 例えば、チャーリー・マクダウェル監督作『ザ・ディスカバリー』は、来世の存在が証明され“こんなクソな人生生きるくらいなら来世に賭ける!”と自殺者が多発している末期的な近未来で、とある男女が運命の出会いを果たしたことから巻き起こる事件を描き出すという内容だ。今作は既に3月31日の全世界配信が決定している。そしてメイコン・ブレア監督作『この世に私の居場所なんてない』は強盗によって家を滅茶苦茶にされ、”これ以上クソどもがのさばるのは許せない!”と怒りを爆発させる孤独な女性の暴走を描くバイオレンス・コメディなのだが、今作に至ってはなんと2月24日に全世界配信が決定している。そんな状況で『この世に~』がドラマ部門で作品賞を獲得した。これが意味するのはつまりサンダンス大賞作が1ヶ月も経たないうちに観られるということだ。今まで作品賞の日本公開はアメリカの半年後以降が普通であり、1年待たされた後ソフトスルーという扱いだった作品も存在する。それを考えるとこの状況は正に革命的としか言い様がない。本当に、Netflixの存在は映画を観ることの意味を全く変えてしまった……。

 1月22日、Amazonがサンダンスで配給権を獲得した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』がアカデミー作品賞にノミネートされた。今までNetflixの配給作がドキュメンタリー部門の候補になったことは数回あったが、作品賞というのはない。つまりAmazonは配信サイトとして初の快挙を成し遂げた訳である。だがNetflixも負けてはいない。彼らは先述した『Mudbound』の配給権を1250万ドル(日本円で約14億)で獲得。今作でアカデミー賞に殴り込みをかける気満々だ。

 “サンダンスはこれからどういう道を歩めばいいのか?”再びこの問いに立ち返ろう。激しいうねりの中でサンダンス映画祭はもはや変化から逃れられないだろう。映画祭はインディペンデント魂だけを追い求める場所では既にもうない。だが見方を変えるなら、これほどインディーとメジャーの存在が混ざりあっている場所は存在しないと言える。どちらかだけを選びとる必要はない。“インディペンデント魂を持つ映画を発掘する”と“インディーとメジャーの架け橋となる”という2つを両立する道を模索するべきなのだ。それはもちろん難しいだろう。しかし、サンダンスはこの30年間、アメリカがどんな状態にあろうとも難局を乗り越えてきた。今回もサンダンスは自身が歩むべき道をきっと見つけ出すはずだ。

■済藤鉄腸
ライター。ネット配信で映画を観るのが好き。MUBIとNetflixで引きこもりが捗る。配信スルー映画・日本では知られていない世界の映画作家たちを紹介するブログ“鉄腸野郎Z-SQUAD!”を書いてます。

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