アメリカ・インディー映画の祭典はどこに行く? 岐路に立つサンダンス映画祭を徹底検証

アメリカ・インディー映画の祭典はどこに行く? 岐路に立つサンダンス映画祭を徹底検証

20170202-Sundance-GodsOwnCountry.jpeg『God’s Own Country』20170202-Sundance-CallMeByYourName.jpeg『Call Me by Your Name』

 そして『Beach Rats』も含めてだが、LGBTいわゆるセクシャル・マイノリティの人々を描いたクィア映画、もしくは自身がセクシャル・マイノリティであるクィア作家の躍進も注目すべき点だ。ワールド・ドラマ部門の監督賞を獲得したフランシス・リーの『God’s Own Country』は、イングランドの田舎町を舞台に羊飼いの青年と移民労働者の男が惹かれあう姿を描いたラブロマンスだった。賞には絡んでいないが、ルカ・グァダニーノの新作『Call Me by Your Name』も、主人公の少年が父の教え子である男性と恋に落ちるという内容で、批評家の絶賛を浴びた。そして詳しくは後述するが、今年のサンダンスで最も話題になった『Mudbound』もクィア作家であるディー・リースが監督した1作である。

20170202-Sundance-TheBigSick.jpeg『The Big Sick』20170202-Sundance-CrownHeights.jpeg『Crown Heights』

 賞と関連して、配信サイトが更なる躍進を果たした事実も見逃せない。去年の事件があり二の足を踏む配給会社を尻目に、まずAmazonがコメディアンであるクメイル・ナンジアニの実体験が元となったドラメディ『The Big Sick』の配給権を1200万ドル(日本円で約13億5000万)で獲得した。続いて20年もの間無実の罪で刑務所に入っていたアフリカ系青年の姿を描くドキュドラマ『Crown Heights』を獲得、今作は後にUSドラマ部門の観客賞に輝くことにもなる。

20170202-Sundance-JoshuaTeenagerVsSuperpower.jpeg『Joshua: Teenager vs Superpower』20170202-Sundance-Icarus.jpeg『Icarus』20170202-Sundance-ChasingCoralTheVrExperience.jpeg『Chasing Coral』

 だが、NetflixはAmazonを越える存在感を見せつけた。総勢10本の配給権もしくはストリーミング権を獲得したというのも圧倒的だが、さらに驚くべきは賞に絡んだ作品の多さだ。『Joshua: Teenager vs Superpower』と『Icarus』、『Chasing Coral』がそれぞれドキュメンタリー部門で賞を勝ち取り、そしてダメ押しの一手とばかりに、映画祭開催前に配給権を獲得した『この世に私の居場所なんてない』がUSドラマ部門の作品賞、つまり『セッション』などが受賞したサンダンスで最も重要な賞を勝ち取る。これはNetflixがサンダンスで天下を獲ったと言っていいくらい革命的であると筆者は考えているが、それについては後に記したい。

20170202-Sundance-Mudbound.jpeg『Mudbound』

 ここからは賞には関わらなかったが、重要な映画を何本か紹介していこう。まず1本目がディー・リースの『Mudbound』だ。第二次世界大戦終結後のミシシッピ州、その田舎町へ2人の青年が帰ってくる。2人は白人/アフリカ系という人種を越え、戦場で絆を深めた友人同士だったが、彼らは自分たちの家族が土地を巡って対立し、泥沼の状況に陥っていることを知る……。サンダンスの恒例行事として”来年のアカデミー賞有力候補は一体どの作品だ?”という話題が毎年持ち上がるが、そこで最も有力視されているのがこの『Mudbound』だった。そしてもうひとつ注目すべきなのは監督ディー・リースの存在だ。リースはアフリカ系/女性/オープンリー・レズビアンであり、つまり彼女が授賞した暁には異性愛者の白人男性中心であるアカデミー賞の歴史が完全に塗り替えられるということになる。というか多様性を謳うのだから、いい加減この歴史は塗り替えられるべきだろう。そういった意味で、今作と彼女の存在は大きな希望として語られている。

20170202-Sundance-kuso.jpeg『KUSO』

 映画祭開催前から一部で話題となっていた作品が、あのフライング・ロータスが本名のSteve名義で監督した初の長編映画『KUSO』だ。『KUSO』は大地震によって終末を迎えたロサンゼルスを舞台に狂人共が暴れまわるという一応のあらすじはあるが、勃起したぺニスがスクリーンに大写しとなるのを皮切りに吐瀉物、胎児、エイリアン、ぺニス、そして題名通り糞、糞、糞の噴水がブチ撒かれ、途中退出者続出の有り様だという。米『The Verge』誌の記者は今作を“史上最もグロテスクな映画”と表現し、超絶ドープな『KUSO』にノックアウト状態。“今作は文字通りクソの山みたいな映画だ、それでも世界が炎に包まれている時代には安らぎを覚えるほど率直だ”と賛辞を送っている。

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