脚本家・演出家/登米裕一の日常的演技論
坂口健太郎は「記号」を超える! 『東京タラレバ娘』の“キー”となる演技を考察
タラレバ娘たちにとって、KEYという存在は脅威だ。大きく分ければ、敵役といえるかもしれない。しかし自らの正義を持っている敵役は、主人公を際立たせるのである。『ダークナイト』のジョーカーや『レオン』のスタンスフィールドなど、信念を持った敵役は、恐ろしくも魅力的だ。そして、主人公たちを追い詰めることによって、彼らの本当の力を引き出しもする。
もちろん、KEYは単純にタラレバ娘たちと敵対関係にあるわけではない。しかし、30代を迎え、失敗と後悔を抱えた主人公たちの正義と、自信と成功に満ち満ちた20代の正義が、本作ではまさに対比となっている。記号的ではない自然な演技で、その役どころを伝えたKEYによって、タラレバ娘たちも今後、その本音を明かしていくことだろう。相手から良い演技を引き出すという意味でも、坂口健太郎演じるKEYは、文字通りこのドラマの“キー”となるはずだ。
■登米裕一
脚本家・演出家。映画『くちびるに歌を』CX『おわらないものがたり』NHK『謎解きLIVEシリーズ』などの脚本を担当。大学時代に旗揚げをした劇団『キリンバズウカ』の主宰も務める。個性豊かな登場人物たちによる軽快な会話の応酬を持ち味としており、若手作家の躍進著しい演劇界の中でも、大きな注目を集める。また演技指導家としても評価を得ており、現在多くのワークショップ依頼を受けている。
■番組情報
『東京タラレバ娘』
毎週水曜日よる10時00分〜
製作著作:日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/tarareba/index.html