ドラマ版『釣りバカ日誌』が旧作ファンからも愛される理由 新春スペシャルで視聴者増加か

 昨年話題を呼んだ『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』(テレビ東京)が、新春ドラマスペシャル『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助 伊勢志摩で大漁!初めての出張編』として、1月2日(月)夜9時に放送される。リメイク作品をヒットさせるのは難しいと言われる中、本シリーズが旧作ファンにも愛される人気ドラマになったのは記憶に新しい。その支持を受けて、この度スペシャル版が放送されることになったわけだが、本作の魅力はどんなところにあるのか。オリジナルの映画版『釣りバカ日誌』と比較しつつ、考察してみたい。

リメイク作品を成功に導いた西田敏行

 『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』(テレビ東京)は、2015年10月から放送された全8回の連続ドラマ。主人公の浜崎伝助(濱田岳)通称ハマちゃんが鈴木建設に入社面接を受けに行くところから、旧作ではラブラブな妻である小林みち子(広瀬アリス)に告白するまでを描く。つまり、ハマちゃんの新人時代にスポットを当てたドラマだ。

 一見、旧作の“エピソード1”的な印象であるが、舞台は2020年の東京オリンピックに向けて建設業界が湧く2015年。旧作では、ハマちゃんが既婚で中堅社員であった時の出来事である。また、鈴木建設の社長・鈴木一之助(西田敏行)通称スーさんとの出会いが入社して間もなくであったり、映画版から踏襲された既出のネタも少なくない。つまり、映画『釣りバカ日誌』のリブート作品と言ったほうが近い。

 ただでさえ有名作品のリメイクは、視聴者にオリジナル版への愛情があるため、評価を得るのは難しい。しかも『釣りバカ日誌』は、『男はつらいよ』に継ぐお正月恒例の国民的作品と言ってもいい作品だ。ハードルは決して低くない。しかし、同ドラマは予測に反し愛される結果となるわけだが、その理由として一番大きいのは、西田敏行にあるのではないだろうか。

 同ドラマには、旧作のハマちゃん役であった西田が、三國連太郎が演じていたスーさん役として出演している。西田の演技がうまいことは誰もが知るところ。しかも、西田は旧作の主役である。そんな西田が相方を演じるのだから、旧作ファンにとっても納得のキャスティングといえよう。西田がどうスーさんを演じるのか、むしろ旧作ファンこそが楽しみな配役だったと言える。

「金曜夜8時には毎週お正月がやって来るんです!」(吹越満 『釣りバカ日誌』記者会見より)

 スタッフ陣が映画版と共通しているのも、心強いところだ。旧作の映画版と同じ松竹が製作と配給を手がけ、朝原雄三と石川勝己が監督を務めた同ドラマ。安易なリメイクではなく、『釣りバカ日誌』を知り尽くしている人たちが作る直系の作品なのである。毎年作られていた内容のものを1時間に凝縮し、それを連ドラとして毎週見られるのだ。要は、8作品分の映画を1クールで見られるという贅沢の極みなのである。先の吹越満の発言は、そういう意味だ。

 また連ドラにしたことで、浜ちゃんとスーさんの師弟関係だけでなく、スーさんの跡継ぎの息子との親子関係や、ハマちゃんの直属の上司である佐々木課長(吹越満)との関係も、より濃密に面白く描かれている。釣りバカワールドの幅を広げながら、松竹お得意の人情喜劇を丁寧に作っていたことも、人気となった要因に違いない。

テレビ東京にピッタリ、老若男女が安心して楽しめるコンテンツ

 テレビ東京で放送というのも、大きかったのではないだろうか。リメイク作品ともなると色眼鏡で見られることが少なくない。しかし、テレ東のドラマはどこかミニシアター的なところがあり、ニッチな作品や実験的なものでも視聴者は懐深く受け止めてくれる傾向にある。

 テレビ東京の金曜8時というと『三匹のおっさん』や『僕らプレイボーイズ 熟年探偵社』などが放送された、老若男女、特に高齢者も楽しめるドラマ枠だ。安心して見られるベタな展開や、視聴者が主人公たちに感情移入しやすい設定は、家族で楽しむのにぴったりである。水戸黄門の正体のように、ハマちゃんとスーさんが同じ会社の社長と平社員ということは、主人公たちと視聴者だけが知る秘密。この秘密の共有も、同ドラマに親しみが湧く大きな要素であり、この枠に向いているのではないだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる