美山加恋、天才子役から実力派女優へ 『ラーメン大好き小泉さん』再ブレイクを考察

 美山加恋が成長した姿を見せ話題となった『ラーメン大好き小泉さん』が、12月29日に年末スペシャルドラマとして帰ってくる。かつて天才子役と呼ばれた彼女が、コメディエンヌとして開花したこのドラマ。20歳となった今、彼女はどんな演技を見せているのか。また、最近はミュージカルや声優など新たなものにも挑戦している。そんな、美山加恋の魅力について考察してみよう。

『僕と彼女と彼女の生きる道』凛ちゃんで大ブレイク

 美山加恋を一躍有名にしたのが、2004年の『僕と彼女と彼女の生きる道』。奇しくもこの年末はSMAP特集としてドラマが再放送され、子役時代の美山加恋の存在を思い出した人も少なくないはず。突如妻に別れを告げられた草なぎ剛演じる銀行員の1人娘、小柳凛を演じたのが当時7歳の美山。常に敬語を話し、冷たい父親の態度にも「はい」という返事だけで、言いたいことをグッと我慢する。子供なのに大人に気を使う健気な姿に当時の視聴者たちは心を奪われ、その演技力で天才子役と呼ばれるように。

 その後も数々のドラマに出演する美山は、やはり凛ちゃんのイメージが強く、清潔感のある優等生キャラを多く演じた。そして次第に、脇に回ってしっかりドラマを支える側に移行していったのだ。美山加恋世代前後は、天才と呼ばれる子役の存在が目立った。上は志田未来や大後寿々花、同世代にはドラマ『ちびまる子ちゃん』で共演した森迫永依、すぐ後ろには大橋のぞみなど、天才子役が軒並み続いた世代である。その中で美山は、仕事が途切れる事なく数々の作品に出演しているのだが、どこか一歩引いて地道に女優業を務めていた印象だ。

コメディエンヌと開花した『ラーメン大好き小泉さん』

 そして、世間の再注目を浴びたのか、2015年に放送された『ラーメン大好き小泉さん』。飯テロドラマブームのまっただ中でラーメンに特化し、さらに元ももクロの早見あかりが連ドラ初主演ということもあり注目を集めた。謎の転校生小泉さん(早見あかり)は、クールで無口な美少女。だが、その容姿からは想像もできないほど、実はかなりのラーメンマニアだった。そんなミステリアスな小泉さんと仲良くなることに異常な執着心を持つ、クラスメイトの大澤悠(美山加恋)。彼女は、ストーカーのように小泉さんを追いかけ、小泉さんとラーメンにどんどんハマっていく。時にはラーメンで友達の悩みを解消する模様も描かれた。

 執拗な行動やラーメンを食べた時の恍惚な表情、変顔など、コミカルな演技と可愛いらしさが話題になり、当初「あの美少女は誰だ?」とお茶の間をざわつかせた。そんな中、出演者欄に流れた“美山加恋”の文字を見て「あの凛ちゃんだったのか!」と、成長した姿に驚く人たちも。ずっと学業と両立してドラマや舞台に出演はしていたが、やはり子役の美山加恋というイメージが根強く残っていたのだ。

 しかし、同ドラマで、子役ではない実力派女優としての美山加恋を印象づけた。彼女の再ブレイクのきっかけとなった作品と言ってもいいだろう。美山が「撮っていても、見ているだけでもひたすら楽しい現場です」(引用:ラーメン大好き小泉さん 公式サイト)と言うように、演技を見ても、インタビュー記事などを読んでも、本当に楽しそうにドラマに取り組んでいるのが伝わってくる。

天才子役から実力派女優へ、新たな試み

 コメディ初挑戦となった『ラーメン大好き小泉さん』は、自信につながったと答えている美山。その後、昼ドラの『新・牡丹と薔薇』(東海テレビ)で、高校生にして妊娠、出産を経験する難しい役を演じたり、2016年はマンガ原作の『終わりのセラフ」The Musical』でミュージカルに初挑戦したりと、女優としての幅を広げる活動的な年となった。

 また、マルチな才能も開花し、『エンドライド』(日本テレビ系)ではアニメ声優に初挑戦。そのアニメの魅力を伝えるAbemaTVの番組『美山加恋のエンドライブ!!』でも初MCを務めた。マルチな才能という意味では、松岡茉優の成功に近いものを感じる。かつて「子役は大成しない」という言葉があったが、そのジンクスはすでに破られている。今は、天才的な子役たちが大きくなってもどん欲に新しいことに挑戦し続けるのだ。美山もその一人である。演技がうまいのはもちろんのこと、昔の演技の面影をいい意味で感じさせないのは一種の才能ではないだろうか。来年以降の活躍を期待せざるを得ない。

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