蒼井優と高畑充希、圧巻の演技で示す女性像 『アズミ・ハルコは行方不明』に漂う美しさと虚しさ

蒼井優と高畑充希が見せる圧巻の演技

 「あー、なんかでっけえことしてえなー!」と、ユキオが叫ぶ。彼らが行ったグラフィティ・アートは、彼らの意識とは無関係に、彼らが生きる地域の中で窒息し、失踪せざるを得なかったアズミ・ハルコの生の感触を孕んで爆発的に拡散されていく。だが、それがチープなアート作品として町おこしの道具に使われ、人の集まらない遊園地「ゆめランド」の外装と成り果てる時、彼らの夢はただの紙くずとなり、消滅する。

 そして拡散され、商業化された春子はどうなったかというと、それまで足搔きつくしていた彼女は超越し、神にでもなったかのように、苦しむ愛菜の前に現れ微笑むのである。
 
 ラストシーンの春子は、あまりにも美しくかっこよかったが、なんだか拍子抜けする。「優雅な生活が最高の復讐である」。彼女が愛菜に教えるスペインのことわざだ。全てを捨てて「女としての幸せ」という典型的なイメージを勝ち取ることが、彼女にとっての幸せだとしたら、やはり彼女もまた、無敵のJKと同じようにどこか空々しいようにも感じた。

(文=藤原奈緒)

■公開情報
『アズミ・ハルコは行方不明』
全国順次公開中
出演:蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい、菊池亜希子、山田真歩、落合モトキ、芹那、花影香音、柳憂怜、国広富之、加瀬亮
監督:松居大悟
原作:「アズミ・ハルコは行方不明」山内マリコ(幻冬舎文庫)
配給:ファントム・フィルム
(c)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会
公式サイト:azumiharuko.com

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