『拝啓、民泊様。』中野裕太インタビュー
『拝啓、民泊様。』中野裕太が明かす、タレント業をやめた理由「退路を断って、役者一本に絞る」
「疑問に感じることも多くなった」
ーー『拝啓、民泊様。』の谷内田彰久監督がメガホンを取った、日台合作映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメというけれど。』で、中野さんは主演を務めています。同作をきっかけに、役者として何か変化したことはありましたか?
中野:主演は作品においての軸であり、責任が重大なポジションなので、学ぶことは多いです。でも、主演を演じたというだけで、役者としてガラリと何かが変化したワケではありません。映画や舞台で主演をやらせていただいたり、バイプレイヤーとして出演するなど、様々な経験を通して自然と見えてきたものが、現在の方向性なんです。『ママは日本へ嫁に行っちゃダメというけれど。』では、中国語を使う役ではないのですが、この役をきっかけに中国語を学び始めました。台湾での撮影は、やはり雰囲気や人当たりなどの違いはあるのですが、根本的には日本での撮影と変わらない印象を受けましたよ。この作品を通して、中国の芸能界や国自体にすごく興味を持ったので、空いた時間に勉強していきたいと考えています。
ーー中野さんは、クラシックバレエやアートなどの趣味も多いですよね?
中野:クラシックバレエは本格的に踊れるというわけではなくて、身体の使い方やインナーマッスルの強化、ストレッチの一環として取り入れています。幼少期から絵や詩を書いたり、音楽を演奏したりと、様々なカルチャーに触れてきました。僕の理想は、そのような元々ライフワークとして行ってきた趣味の世界観を、俳優としての仕事に合致させることなんですよ。最近、それが少しずつ噛み合ってきたかな、と思います。ただ、うまく合致させるためには、役者としてのテクニックや実績などが必要で…僕はまだそこには達していないですね。
ーー中野さんは、以前はバラエティー番組で活躍されていた印象があるのですが、現在は俳優業に力を注いでいますよね。
中野:『仮面ライダーキバ』に出演していた頃から、ずっと一貫して役者業をやりたいと考えていました。ただ、どんな仕事をしていても、誰もがやりたいことだけをできるわけではない。自分らしい道に少しずつ近づくための努力をし続けた結果、今はタレント業を一旦お休みして、役者業に専念することができるようになりました。
ーータレント活動を休もうと思った時期は、どういうことを考えていたのですか?
中野:タレント業を行っていく上で、だんだんと疑問に感じることも多くなってきました。たとえば、ラジオ番組に出演しているとき、僕はラジオパーソナリティーの勉強をしているわけでもないので、どんな声で「こんにちは」ってリスナーに呼びかければ良いのか、わからなくなってしまったんです。すごく細かいことだとは思うのですが、そういう部分を気にしてしまうタチなんですよ。それに、タレント業をやっているときも、物作りや演技に対する欲求がどんどん強くなってきて、自らショートフィルムを撮ることもありました。
ーー自分の仕事とやりたいことにズレが生じていたのですね。
中野:あの頃は、とにかく芝居を練習しないと、と思っていました。自分で演技の先生を見つけてきて、週2回ほどプライベートレッスンを受けていたり、ハリウッドのメソッド演劇の先生に、「とにかく1から叩き込んでください」とお願いして、2年半くらい教わっていました。世間に見える仕事としては、タレントとして活動していたのですが、裏ではコツコツ俳優としてのスキルを磨いていました。
ーーなるほど。
中野:それで、2年くらい前に事務所の方と良く話し合い、役者一本に絞っていこう、ということになりました。もちろん、自分から退路を断つようで不安もありましたけどね。 今振り返ってみると、大変な時期だったと思いますが、当時行っていたタレント業を通じて、 貴重な経験をさせて頂けたことには本当に感謝しています。
ーーでは、これから役者として新しく挑戦したいことはありますか?
中野:秘密です(笑)。でも、とにかくいい芝居をして、いい作品を作って、見た方たちに「今日、良かったね!」と言っていただけるような、そんな作品にどんどん携わっていきたいです。
(取材・文=戸塚安友奈)
■ドラマ情報
『拝啓、民泊様。』
毎週月曜0:50〜1:20(MBS)
毎週水曜1:28〜1:58(TBS)
10月26日深夜24時より、NETFLIXにて独占配信開始
監督:谷内田彰久
脚本:野村伸一
出演:新井浩文、黒木メイサ、中野裕太、今野杏南ほか
取材協力:日本工学院専門学校