『勇者ヨシヒコ』『刑事ダンス』『家政夫のミタゾノ』……秋の深夜ドラマは“変化球”ばかり!?

秋ドラマ、深夜帯の見どころは?

深夜の“捜査官”は、いずれも超変化球

 「女性主人公の活躍」と並んで、「捜査官もの」が多く見られた「プライムタイム」のドラマですが、それは「深夜ドラマ」も同様。しかし、先述の『潜入捜査 アイドル・刑事(デカ)ダンス』を筆頭に、その設定は「プライムタイム」以上に、ぶっ飛んでいます。たとえば、TBS“水ドラ!!”枠でスタートする、柄本佑主演の『コック警部の晩餐会』(10月19日(水)24時10分~/TBS系)。その内容は、料理の腕前がプロ級の“コック警部”こと“古久星三(こっくほしみつ)”が、容疑者たちを晩餐会に招いて犯人をあぶりだすという、前代未聞のグルメ・ミステリー・ドラマになるのだとか。連続ドラマ初主演となる柄本佑はもちろん、本作がドラマ初挑戦となる小島瑠璃子の演技、さらには“深夜の飯テロ”たる料理の数々も見どころの一本となるようです。

 そして、先頃、年内でAKB48グループから卒業することを発表した島崎遥香が主演する『警視庁 ナシゴレン課』(10月17日(月)24時15分~/テレビ朝日系)。こちらも、かなり奮った設定になっています。島崎演じる、卓越した洞察力と推理力を持つ“デカ長”が、現場に出向かず、捜査もせずに、次々難事件を解決。しかも、それをワンシチュエーション・コメディで描くというのだから驚きです。古田新太、勝村政信ら舞台出身のベテラン俳優に加えて、『火花』の波岡一喜、「大人計画」の猫背椿など、アクの強い共演者たちのなかで、島崎遥香は、どんな座長ぶりを披露するのでしょう。ドラマ『ゆとりですがなにか』の演技が好評だった“ぱるる”だけに、ファンならずとも注目の一本です。

地方局発の深夜ドラマ

 変化球を投げてくるのは、何もキー局だけではありません。先述の『拝啓、民泊様。』は、毎日放送の制作。そして、すでに放送がスタートしている『黒い十人の女』(毎週木曜23時59分~/日本テレビ系)は、読売テレビの制作です。映画ファンにはお馴染み市川崑監督の名作を、バカリズム脚本によって現代版にアレンジ。船越英一郎主演、成海璃子、トリンドル玲奈、佐藤仁美、水野美紀らの共演で送る本作。バカリズムと言えば、関西テレビ制作、フジテレビ系で放送された『素敵な選TAXI』が好評を博し、10月10日(月)にフジテレビ系で放送される、広末涼子、井川遥、斉藤由貴主演のオムニバス・ドラマ『かもしれない女優たち 2016』の脚本も担当するなど、芸人やMCとしてはもちろん、脚本家としても絶好調です。

 一方、今春からスタートした、東海テレビ制作、フジテレビ系放送の新ドラマ枠“オトナの土ドラ”では、田辺誠一主演の『とげ 小市民 倉永晴之の逆襲』(毎週土曜23時40分~/フジテレビ系)がスタートしました。山本甲士が2008年に発表した小説『とげ』のドラマ化である本作は、市役所の市民相談室で働く主人公が、市民から寄せられる理不尽な苦情や要望に応えながら、次第にストレスを募らせ、やがて……という内容。田辺誠一の妻役を演じる西田尚美、市長役を演じる鹿賀丈史、そしてモンスタークレーマー役を演じる木の実ナナなど、なかなか胃の痛くなる展開が予想される本作ですが、果たして主人公に平穏の日々は訪れるのでしょうか。

 いずれも超変化球だけに、そのすべてがストライク!というわけにはいかないかもしれませんが、その心意気や良し。この夏、視聴率的には大苦戦となったドラマ界を救う作品は、ひょっとするとこのなかから生まれるのかもしれません。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。

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