役者と芸人、共通するセンスとテクニックは? 女優・大塚シノブが漫才映画『エミアビ〜』を観る

役者と芸人、共通するセンスとテクニックは?

 芸人が役者をするというのはよくあることだが、この映画では役者が芸人を演じている。お笑い芸人を題材にした作品もいくつかあるが、この作品では生と死という究極のテーマの中で、お笑いに向き合う人間たちを描いている。主演はTV『あまちゃん』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』などでの演技で注目の森岡龍、そして映画『桐島、部活やめるってよ』他、最近はauのCMでの一寸法師役も話題の前野朋哉。まずこの2人が俳優同士でなく、本物の漫才コンビなのではないかと見紛うほど、息の合った漫才を見せていることに驚く。そのテンポの良さは一線のお笑い芸人に引けを取らないほどだ。

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 チャラ系の実道と誠実で人の良さそうな海野。登場人物それぞれのキャラクターが立っていることも見どころの一つだ。他にも実力派俳優たちが脇を固めているが、先輩芸人黒沢を演じる新井浩文が漫才を披露していたり、マネージャー夏海を演じる黒木華がデスメタルバンドのボーカルかのような出で立ちであったりと、予想を覆したような役者の使い方も面白い。そして“エミアビ”の初期の頃のネタと、人気が出て来てからのネタのレベルの違いなど、細部にも神経が行き届いているように感じる。

 個人的にツボだったのは、笑いに厳しい先輩芸人黒沢がピンになった実道にダメ出しをしまくるシーン。それはどんどんエスカレートして行き、あげくの果てには「そうそう、そうなんだよ」と我を忘れて、私も黒沢と共にツッコミを入れつつ爆笑し「そうは言われても…」とダメ出しされている実道の気持ちにもなってしまうという、コントでもないのにボケとツッコミを同時に味わえるようなリアル感。そして“エミアビ”の2人と黒沢が集う居酒屋のシーンに、自然と割り込んでくる店員のタイミングの面白さ。コントではない場面のコントのような世界観に、私の感情は終始休むことなく、常にくすぐりを受けているかのようであった。

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■大塚 シノブ
5年間中国在住の経験を持ち、中国の名門大学「中央戯劇学院」では舞台監督・演技も学ぶ。以来、中国・香港・シンガポール・日本各国で女優・モデルとして活動。日本人初として、中国ファッション誌表紙、香港化粧品キャラクター、シンガポールドラマ主演で抜擢。現在は芸能の他、アジア関連の活動なども行い、枠にとらわれない活動を目指す。
ブログ:https://otsukashinobu5.wordpress.com/
日本の芸能に関してのお問い合わせはこちらへ :http://www.breathinc.com/

■公開情報
『エミアビのはじまりとはじまり』
9月3日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
出演:森岡龍、前野朋哉、黒木華、山地まり、新井浩文
監督・脚本:渡辺謙作
配給:ビターズ・エンド
製作:『エミアビのはじまりとはじまり』製作委員会(ブレス、ビターズ・エンド、ミッドシップ)
2016年/日本/カラー/87分/ビスタ/5.1ch
(c)2016『エミアビのはじまりとはじまり』製作委員会
公式サイト:http://bitters.co.jp/emiabi/

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