木南晴夏、名セリフ「この泥棒猫!」のインパクト “ヤンデレ”演技が加速している

 現在TBS系列の火曜22時から放送されているドラマ『せいせいするほど、愛してる』。ティファニーで働く栗原未亜(武井咲)と、若き副社長・三好海里(滝沢秀明)の禁断の恋を描いた本作は、不倫という、今年とくに注目されているセンセーショナルなテーマを扱う。もっとも、これまで数多くのドラマで扱われてきた題材なだけに、特別奇をてらった筋書きになっていないのが魅力的だ。

 主演の二人の周囲を取り巻くキャスティングが、橋本マナミや中村隼人、中村蒼など、個性の強い俳優でまとめられている中で、一際異彩を放つのが木南晴夏だろう。彼女が演じている海里の妻・三好優香は、交通事故で長いあいだ意識不明のまま眠り続けていた。第3話までは、橋本マナミ演じる優香の姉・遥香が、海里の妻であるかのようにミスリードさせ、優香の姿は登場しない。海里が抱えている秘密とは何かを知ろうとする未亜が中心に描かれてきたのだが、第4話でついに優香が目覚めると、物語は急転する。

 さも“女の勘”というやつだろうか、海里に頻繁に未亜の話を振ったり、積極的に彼女に近づこうとする。結果、未亜に「絶対に敵わない」と思わせるほどの、最大のライバルとして立ちはだかる。よくよく考えてみたら主人公目線で見れば悪役のような位置づけになってしまうだけで、主人公が道を外れた行為をしている以上、真っ当なキャラクターと言われればそう見えなくもない。

 しかし、どこかトゲのある冷静さと、狂気に満ちた表情は、もはや悪役以外の何者でもない。第6話の終盤の空港の場面、車椅子から立ち上がり、未亜に向かって「この泥棒猫!」と罵るところは、不倫ドラマの典型的描写ながら、彼女の迫力に押されて、一気にこのドラマ全体のハイライトとなった。TVスポットで流れたこの映像を見たいがために視聴率が急に上がったのではないかと思ってしまうほどだ。例によって第7話でもこのカットが繰り返し流されるから、作り手側も味をしめたのだろうか。

 本作の全体的にベタな展開と、登場人物のインパクトの強さは、昼メロか大映ドラマかといった印象を受けるが、ここまできたら完全に後者だろう。昨年秋クールに放送されていた『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』のような往年の大映ドラマを想起させる作品が近年再び見受けられるようになったが、やはり本作のようなドロドロの愛憎劇のほうがその面白みが増す。とくに、この空港での場面の木南晴夏の猟奇的な演技は、98年に同じTBS系列で放送されていた大映テレビ製作のドラマ『仮面の女』で雛形あきこが見せた怪演を思い出さずにはいられない。

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