『家政婦のミタ』から『はじめまして、愛してます。』へーー遊川ドラマの“方法論”はどう変化した?

 美奈の父親はロダンの言葉を引用して「実は私達はたくさんの美しいものにそばで生きているんだ。ただ惜しむべきはそれに気づく人が少ない」と言う。この台詞は音楽の仕事に没頭して、美奈のことが見えていない父親の鈍感さを逆説的に伝えた皮肉な台詞に見えた。しかし、動物園で迷子になった男の子を呼び戻すために広場にあったピアノを弾いた美奈が思い出すのは、幼い時に父にピアノを教えてもらった思い出だった。美奈は、男の子がピアノに引かれるのは、何もないアパートにいたから、ピアノの音色という「美しいもの」を求めたのではないかと思う。

 里親の資格を得たことで、来週は、いよいよ梅田家に男の子が同居することになる。音楽を通して奇跡を描くという難題に本作は立ち向かおうとしている。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『はじめまして、愛しています。』
テレビ朝日系
毎週木曜日夜9時〜
出演:尾野真千子、江口洋介、横山歩ほか
脚本:遊川和彦
公式サイトhttp://www.tv-asahi.co.jp/hajimemashite/

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