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成馬零一の直球ドラマ評論『好きな人がいること』

桐谷美玲は“月9ブランド”を取り戻せるか? 『好きな人がいること』に見るフジテレビの本気

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 フジテレビ系月曜夜9時から放送されている『好きな人がいること』(フジテレビ系)は、パティシエの櫻井美咲(桐谷美玲)がイケメン三兄弟の家に居候しながら海の家でひと夏を過ごすコメディタッチの胸キュンラブストーリー。第二話まで見て一番に感じたのは、本気で月9を立て直そうとしている作り手の気概だ。

 近年の月9は視聴率面で苦戦している。本作の前に放送された『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(以下、『いつ恋』)は全話の平均視聴率が9.7%(関東地区)、その次の『ラヴソング』の平均視聴率は8.5%(同)と、最低視聴率が続いている。

 もちろん視聴率と作品の面白さは別の問題だ。坂元裕二が脚本を書いた『いつ恋』は後半こそ若干完成度が落ちたものの、テレビドラマ史に残る傑作だったと言える。『ラヴソング』も難点は色々あるが、女優経験のない藤原さくらを主演に抜擢して吃音の女性を主人公にした意欲作だったことは間違いない。しかし、その面白さや冒険している部分が、月9に求められていることとズレていたことは間違いないだろう。対して『好きな人がいること』は逆にピントがしっかりと合っている。

 例えば、ヒロインが同居することになる三兄弟の設定。櫻井を湘南のレストランに誘った長男の柴崎千秋(三浦翔平)は櫻井の初恋の人で優しく頼りがいがある先輩。次男の夏向(山崎賢人)は無愛想で嫌味ばかり言うが、思っていることを言い合える同級生のような存在。そして三男の冬真(野村周平)は人なつっこい甘えん坊だがどこか影があるという、イケメンドラマの鏡とでもいうような完璧な配置だ。

 出てくるアイテムも、スマホのSiriに話しかけたり、インスタグラムの写真を小道具として使用することで、今の風俗を必死で取り入れようとしている。また、「夏といえば海!」というリゾート感覚の取り込み方は『SUMMER NUDE』や『恋仲』でもおこなわれた定番の設定だが、もっとさかのぼれば、トレンディドラマの元祖とも言える『抱きしめたい!』のオープニングを思わせる。当時のトレンディドラマは不自然なくらい最先端のアイテムが次々と登場して、華のある俳優がオシャレな恰好をして登場するというファッション雑誌のような作りとなっていたが、そういったカタログ性は本作にも引き継がれている。

 何より桐谷美玲がいい。かつてのW浅野(浅野温子、浅野ゆう子)や鈴木保奈美のような、オシャレでカッコいいコメディエンヌ的なセンスが彼女にはある。役柄自体は昨年ヒットした映画『ヒロイン失格』の影響が強いのだが、見た目はギャルっぽくて遊んでいるように見えるが実は純情で優しいという新時代のヒロインを演じられるのは桐谷美玲と西内まりやが双璧だろう。言うなれば、女性から見て好感度が高くて見ているだけど元気がもらえるような女優ということだ。例えば石原さとみだと、どうしても男性視聴者の願望が全面に出たお姫様感が強くなりすぎてしまうのだが、桐谷にはどんなにオシャレでカッコよくても、親しみやすいズッコケた明るさがある。

      

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