『貞子vs伽椰子』が傑作ホラーとなった理由ーーそれぞれの“呪いシステム”をどう活かしたか?
一方で、伽椰子の方はというと、相変わらずなかなか出不精な性質で、かなり溜めに溜めた登場の仕方をする。これがホーム側の余裕だろうか。舞台となる佐伯家の立地はいつ見ても変わっているとはいえ、中の作りは新版に近いだろうか。玄関から二階へ直階段が伸びているので、オリジナル版で見られるような、かね折れ階段ではない。角を曲がるという華麗なモーションがない代わりに、踏み板と踏み板の間が抜けている構造なので、そこから顔を出すというサービスが魅力的に映る。
息子の俊雄くんと共に、家に訪れた方々を“歓迎”する姿勢は相変わらずで、風呂場と押入れが登場するのは嬉しいところ。隣の家に越してきた鈴花(玉城ティナ)が、部屋の窓から呪いの家を見るというショットが登場するあたり、オリジナル版よりも新版を踏襲していると見て良いだろう。
歴代の貞子役を務めた女優は多数いるが、正直誰がやっても顔が隠れているからそれほど大きな違いは出ない。伽椰子の方は顔を白く塗っているとはいえ、やはり演者によって印象が変わるのである。やはり初代の藤貴子に敵う適役はいないが、今回初めて伽倻子を演じる遠藤留奈の動きもなかなかキレがあって見事だった。
今回のコラボレーションが、こんなにも楽しませてくれる作品になってくれただけに、ファン感情としては、これから先もどんどんJホラーのコラボ企画を打ってほしいと思うばかりだ。『クロユリ団地』のミノルくんと『呪怨』の俊雄くんの対決も見てみたいし、あらゆる垣根を超えて『富江』の川上富江が入り乱れるところまで行けば完璧だろう。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■公開情報
『貞子vs伽椰子』
6月18日(土)全国ロードショー
監督・脚本:白石晃士
出演:山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美、田中美里、甲本雅裕、安藤政信
制作・配給:KADOKAWA
(c)2016「貞子vs伽椰子」製作委員会
公式サイト:http://sadakovskayako.jp