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門間雄介の「日本映画を更新する人たち」 第3回

『ディストラクション・ベイビーズ』&『ヒメアノ~ル』、門間雄介が“ヤバい映画”を分析

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20160524-himeanole.jpgヒメアノ〜ル (c)2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会

 ヤバい映画を作ろう。まるで示し合わせたかのように、バイオレンスを妥協なく描こうとする映画が立て続けに公開される。でもエグい描写を盛り込んだからといって、それでヤバい映画ができあがるほど話は単純じゃない。その点、『ヒメアノ~ル』はよく練りあげられた構成のもと、緊張と弛緩の緩急を自在に使い分け、日常に不意に侵入してきた連続殺人鬼の恐怖を体感させる。

 前半の童貞臭あふれる日常はイカ臭く馬鹿馬鹿しく。一点して殺人鬼の狂気が日常に浸潤する後半は残酷で凄惨に。脚本も自ら書いた吉田恵輔監督の腕が冴えわたる。『さんかく』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』など、恋愛を中心に人間の関係性を底意地悪く見つめたオリジナル脚本作で評価の高い吉田だが、古谷実のコミックを実写化した本作でも彼の持ち味は失われていない。いや、それどころか人間の闇に深く切りこむことで、脚本も演出も覚醒したと言っていいだろう。

 唸ったのはこんなシーンだ。濱田岳扮するチェリーボーイの岡田は、高嶺の花だったユカと思いもかけず結ばれ、イチャイチャベタベタしている。一方、森田剛扮するシリアルキラーの森田は、手駒のようにこき使う同級生とその婚約者に襲われるが、反対に彼らを惨殺する。その明と暗の対比を、後背位で絶頂に至るユカと背後からメッタ刺しにされ失禁する婚約者のカットバックで見せる、鮮やかさ、嫌らしさ、惨たらしさ!

 森田剛扮する冷酷無比な森田は、荒み、乾ききって、人間らしい血とも涙とも無縁だ。すぐそこにいそうな、ごく普通の青年を演じさせたら、濱田の右に出る者はいないこともあらためてわかる。他にも、ユカ役の佐津川愛美、風変わりすぎる先輩役のムロツヨシなど、キャスティングは的確で抜かりがない。『ヒメアノ~ル』。これは紛れもなくヤバい映画だ。

■門間雄介
編集者/ライター。「BRUTUS」「CREA」「DIME」「ELLE」「Harper’s BAZAAR」「POPEYE」などに執筆。
編集・構成を行った「伊坂幸太郎×山下敦弘 実験4号」「星野源 雑談集1」「二階堂ふみ アダルト 上」が発売中。Twitter

■公開情報
『ディストラクション・ベイビーズ』
公開中
監督・脚本:真利子哲也
脚本:喜安浩平
出演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮、北村匠海、三浦誠己、でんでん
配給:東京テアトル
(c)2016『ディストラクション・ベイビーズ』製作委員会  
公式サイト:distraction-babies.com

『ヒメアノ〜ル』
5月28日(土)、TOHOシネマズ 新宿ほか全国公開
監督・脚本:吉田恵輔
原作:古谷 実
出演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ 
配給:日活
(c)2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会
公式サイト:himeanole-movie.com/

      

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