『ディストラクション・ベイビーズ』は優れた寓話だーー柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎の演技が伝えるもの
まったく救いがない話のように思われたかもしれないが、そうではない。泰良の弟である芦原将太(村上虹郎)の存在が「希望」なのだ。彼は、友人からの侮蔑に毅然と立ち向かうし、犯罪者の兄を持つ悲しみを乗り越えようとする。そう、泰良とも那奈とも違う「強さ」を持っているのだ。喧嘩は弱い、身長だって(友人たちに比べて)低い、おまけに両親はおらず、犯罪者の兄は行方知れず、海沿いの造船所のプレハブ小屋にひとり住んでいる…と八方ふさがりな状況でも、決してあきらめない姿は、見る者の心を打つのである。
泰良、裕也、那奈、将太という、それぞれ明確な役割を背負った人物を配置することで優れた寓話として成立させながらも、出演者の素晴らしい演技を引き出し、リアリティのある演出でヒリヒリした切迫感のある物語に仕上げた真利子哲也監督の手腕に、今後も期待したい。
■昇大司
1975年生まれ。広告代理店にて、映像作品の企画などを行う。好きな映画は『アマデウス』『ラストエンペラー』『蜘蛛巣城』など。Twitter
■公開情報
『ディストラクション・ベイビーズ』
公開中
監督・脚本:真利子哲也
脚本:喜安浩平
出演:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮、北村匠海、三浦誠己、でんでん
(c)2016『ディストラクション・ベイビーズ』製作委員会
公式サイト:distraction-babies.com