ジョニー・デップはなぜ醜悪な犯罪者を演じる必要があったのか?

ジョニー・デップが極悪犯罪者演じた理由

 本作の『ブラック・スキャンダル』の監督、スコット・クーパーは、俳優出身ということもあり、役者の見せ場をしっかりと作り、演技を活かす長回し演出を多用するなど、俳優の魅力を優先させる作風だ。とくに本作では、ジョニー・デップ以外にも、ホワイティの凶悪さに翻弄されるFBI捜査官を演じたジョエル・エドガートンや、ホワイティの部下を演じたジェシー・プレモンスが、それぞれ存在感を見せ付けて、俳優としての評価を上げている。

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 また、実際の犯罪の背景となった、ボストン南部のアイルランド系住民のコミュニティにおける結びつきの強さや排他性という、かなりデリケートな題材を正面から描いた、製作者達の勇気は評価されるべきだろう。あの大悪人ホワイティですら、「告げ口」行為が露見すると、コミュニティでの庇護を失ってしまう。同じくアイルランド系アメリカ人の映画監督、ジョン・フォードによる、アイルランド独立戦争中に仲間の情報を当局に売って、「告げ口」をした男の罪の重さを描いた映画『男の敵』を見ても、良くも悪くも、一部のアイルランド人達の「鉄の結束」を確認することができる。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

『ブラック・スキャンダル』特別映像

■公開情報
『ブラック・スキャンダル』
新宿ピカデリーほかにて全国公開中
出演:ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチ、ロリー・コクレイン、ジェシー・プレモンス、デイビッド・ハーバー、ダコタ・ジョンソン
監督・製作:スコット・クーパー
原作:「ブラック・スキャンダル」ディック・レイア&ジェラード・オニール著(角川文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:Black Mass/全米公開:2015年9月18日/123分/R15+
(c)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., CCP BLACK MASS FILM HOLDINGS, LLC, RATPAC ENTERTAINMENT, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト:www.black-scandal.jp

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