NEWS・加藤シゲアキの小説は、なぜ映像化に向いていたのか?

 9日から放送が始まった連続ドラマ『傘を持たない蟻たちは』でも同じことが言える。原作は、それぞれが独立した6編の短編集だが、連続ドラマではひとつの短編を軸に、他の短編の時系列を重ねることによって再構築している。原作は2015年に出版された最新作であり、初めて芸能界以外を舞台に”生と性”を描いた作品で、加藤にとっては作家としての腕が真に試される一冊である。先日放送された第1話では、主人公である落ち目のSF作家・橋本純(桐山漣)の小説(空想)として、原作のうちの1編が登場した。ほかにも、橋本がすでに出版した作品として、会話の中に6編のタイトルが出てくるなど、作中作として原作を登場させるメタ構造になっていることがわかる。また、加藤が原作、出演、主題歌と三役をこなしていることも見逃せない。加藤が作中に登場することによって、さらに虚実のあわいが混濁しているのだが、だからこそ加藤の描き出そうとするテーマはより鮮明に見えてくる仕掛けだ。

 ジャニーズのアイドルが本格的に作家活動をするのは極めて異例なことである。しかも、『ピンクとグレー』は、虚実の入り混じった世界に生きるアイドル自身が、そこで感じた人生の苦悩を、脚色を加えながらも大胆に描いている。そして、虚構性の中に描かれる生と死こそが、これまでの加藤の作品に通底するテーマでもある。

 今回の2作品が原作とはまた違った新鮮さを感じさせるのは、映像化にともない、物語に別次元のアプローチを加えることで、その虚構に新たな視座を与えたからだろう。たとえば、現役のアイドルである中島は今回の役柄をどんな心境で演じたのか、自らが生み出したキャラクターと対峙するとき、加藤は何を思ったのか。そこに思いを馳せたとき、加藤の作品はいとも簡単に虚実の壁を越え、作中の人物たちの言葉はさらなるリアリティとともに立ち上がるはずだ。

(文=小島由女)

◼︎ドラマ情報
『傘を持たない蟻たちは』
毎週土曜23時40分から放送中(全4回)
原作:加藤シゲアキ
出演者:桐山漣、加藤シゲアキ、阪田マサノブ、足立梨花、渡辺舞、武田玲奈、南沢奈央、竜雷太 他
脚本:小川真
編成企画:羽鳥健一
プロデュース:江森浩子
演出:河野圭太
制作:フジテレビ、共同テレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/kasaari/index.html

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