2015年も“朝ドラ”が圧勝だった理由は? 大きく変わるドラマ視聴環境を考察

2015年のドラマシーンを統括

 2015年のテレビドラマを総括すると、放送環境の変化が目につく一年だった。

 たとえば今年の1月を境に、かつては11話だった1クールのドラマの多くが全10話で終了するようになった。一方、復活したフジテレビの土曜ドラマは30分のドラマを4~5話放送するという形式となっており、他にも『となりの関くんとるみちゃんの事象』(TBS系)のような二本立てで30分のドラマなども生まれている。視聴率がとれなくなっているテレビドラマの製作費を削減するための措置と言ってしまえばそれまでだが、それ以上に感じるのは、今まで慣れ親しんでいたテレビドラマの放送形式が、終りつつあるかもしれないということだ。

 2010年以降、テレビドラマの観られ方は変わった。00年代までのテレビドラマは、リアルタイムで放送されている作品を見て楽しむ普通のテレビ視聴と、ビデオやDVDに録画して細部まで繰り返し見るソフト消費の二種類に分かれていた。宮藤官九郎の『木更津キャッツアイ』(TBS系)等のドラマは、後者のソフト消費に強く、本放送での視聴率が低くても、放送終了後にDVD-BOXがベストセラーとなったり、再放送で人気に火がつき、後に映画化されるといった、視聴率とは違う作品価値を生んでいた。

 これが2010年代に入りtwitter等のSNSが盛り上がってくると、リアルタイムでコメントを共有することでお祭り的に楽しむSNS消費が主流となってくる。その時に一番SNSと相性がよかったのが連続テレビ小説(朝ドラ)だった。朝ドラは、一日15分×6日(月~土)を半年間放送する。毎日少しずつ放送される物語は、昔は、いつみても話の内容についていけるくらいゆったりとしたペースで放送されていたが、近年では民放ドラマで活躍する脚本家を積極的に起用することで、かなりの情報密度の物語を展開するようになった。

 そこで起こる細かい物語やディテールに対し、視聴者が反応しSNSに書き込んでいくことで人気が盛り上がっていく。こういったSNS消費は朝ドラ以外でもおこなわれているのだが、週に一回放送されるドラマと毎日放送されるドラマでは情報量が圧倒的に違う。しかも朝ドラはBSも合わせると再放送も含めて一日に4回も放送されるため、見逃した視聴者に対する配慮も万全だ。

 この一日15分のペースに慣れてくると、一週間に1話(45分弱)という民放ドラマの放送形態がまどろっこしくて仕方がない。毎日少しずつ見るというペースに慣れてしまった視聴者には、毎週決まった時間にドラマを見るということは、敷居が高いものとなってきている。作品の出来以前に、視聴環境の違いにおいて、他のドラマは朝ドラに負けているのだ。

 『あまちゃん』(NHK)が大ヒットした時、民放も朝ドラのような毎日15分ずつ放送されるドラマを作るのではないかと思っていた。しかし、今に至るまで、民放の朝ドラは作られていない。おそらく編成とスポンサーの問題だろうが、その結果、視聴者が一番見やすい日曜夜9時に放送されている『下町ロケット』等が放送されているTBSの日曜劇場以外は視聴者をつかみ損ねたまま、じわじわと視聴率が低下していっているというのがシビアな現状だ。

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