黒川芽以、なぜ男たちを惹きつける? 『愛を語れば変態ですか』で見せたミステリアスな色気

最新主演作から辿る、黒川芽以の魅力

 現在公開中の映画『愛を語れば変態ですか』。主演は黒川芽以。彼女のことを強く意識するようになったのは、銀杏BOYZの峯田和伸が主演した映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(監督:三浦大輔/2010年)を観てからだ。花沢健吾による原作漫画の時点で、多くの男たちに衝撃と戦慄を与えていた(アンチ)ヒロイン……主人公の純情を弄ぶ、一見純粋無垢な魔性の女・植村ちはるを演じていたのが彼女だった。決して派手では無いものの、男性を惹きつけてやまない魅力と色気を持った女の子。そんな微妙な役どころを、彼女は実に鮮烈に演じていたのだった。

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 その後も、江國香織の小説を映画化した『スイートリトルライズ』(監督:矢崎仁司/2010年)、吉田修一の小説を映画化した『横道世之介』(監督:沖田修一/2013年)、『ぼくたちの家族』(監督:石井裕也/2014年)など、数々の名作・秀作に出演していた黒川芽以。しかし、そのいずれもが、「あ、この女優さんは……」と気づいた途端に登場しなくなる、そんな役どころが多かった。正直、物足りないというか、率直にもっと長い時間、観たいと思った。なので、名カメラマン、たむらまさきの初監督作『ドライブイン蒲生』(2014年)の主演に、染谷将太と並んで彼女が起用されたときは思わず快哉を叫んだし、意気揚々と劇場に駆けつけた。そこで彼女が演じていた、茶髪の元ヤン、夫のDVを受けて、幼い娘ともども弟(染谷)の住む実家に出戻って来た姉という役どころは、かなり衝撃的ではあったものの、これはこれで相当グッと来た。

 そして、2015年。空前の黒川芽以ラッシュがやって来た。『きみはいい子』(監督:呉美保)、『忍者狩り』(監督:千葉誠治)、『かぐらめ』(監督:奥秋泰男)、さらには東京国際映画祭で来年公開予定の映画『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(監督:中川龍太郎)が披露されるなど、彼女の出演作が立て続けに上映された今年。その最後を飾るのが、この映画『愛を語れば変態ですか』という次第である。なんという鮮烈なタイトル。そして、なんという役どころ。聞くところによると、彼女に翻弄される5人の男たちの話であるというではないか。劇団ピチチ5を主宰し、数々の作品によって“演劇界の鬼才”と呼ばれている演出家・福原充則が、自身の戯曲「キング・オブ・心中」をベースに書き上げ、念願の監督デビュー作として撮り上げた本作。「黒川さんは、男女の関係の中に妙なドロドロとポップさを持ったまま、ギリギリ清潔感を持って演じるのが得意な人だとずっと思っていました」とは監督の弁。うむ、これは期待できそうだ。

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 映画の舞台となるのは、一軒家を改造したおしゃれなカレーショップ。妻・あさこ(黒川芽以)と過ごす時間を増やすため、夫・治(野間口徹)が脱サラして始めようとしている店だ。そのオープンを翌日に控え、手伝いに来てくれた夫の後輩・ボン(川合正悟/Wエンジン チャンカワイ)ともども、仲睦まじく準備にいそしむ治とあさこ。そこに、覚悟を決めた男たちが、次々とやって来る。まずは、バイト志望のフリーター・西村(今野浩喜/キングオブコメディ)。続いて、あさこの元浮気相手(!)で現ストーカーの釣川(栩原楽人)。さらには、この物件を紹介した不動産屋であり、どう見てもヤクザ……しかも、あさことただならぬ関係であることを匂わせる望月(永島敏行)。他人の話を聞かず、それぞれの思いをぶちまける彼らの訪問によって、店の準備は頓挫。治とあさこの夫婦関係もグラグラと揺らぎ始め……という、ある種のシチュエーション・コメディだ。

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