シカに運命を狂わされた三兄妹の行き着く先は? 足利発『ディアーディアー』の魅力

足利発『ディアーディアー』の魅力に迫る

シカは古より神の使者とも言われ…

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 この切なくも愛らしいヒューマン・コメディが、これほど自由にエピソードを盛り込みながらも一点透視図法のごとくきちんとラストで集約されていくのは、やはり紛れもなく「シカ」の存在によるところが大きい。

 たとえば『マグノリア』で空からカエルが振って来た時のように、神秘的な出来事は全ての複線を繋げる力を持つ。そうやっていつしか、三兄妹が心を通わせ、あの頃のように同じ方向を見つめた時、そこには望むべき光景が広がっているのだろう。いや待てよ、むしろずっと見つめられていたのは、彼ら三兄妹のほうだったのかもしれないな……。そう観客が気付く時に、この不可思議な物語は永遠となる。

 とにもかくにも、私たちは夜な夜な21時を過ぎた頃、まるで森に分け入った探検隊のような面持ちで、『ディアーディアー』というマボロシと出逢う。ひとたび目撃したならば最後。たまらず「面白い!」と吹聴せずにいられなくなるのが本作の魅力だ。わたしたちはそうやって今宵もまた、シカの神様の目論みに突き動かされ、まんまと伝説の一部に組み込まれていくのである。必見。

■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。Twitter

■公開情報
『ディアーディアー』
10月24日よりテアトル新宿にてレイトショー、全国順次公開。
監督:菊地健雄
脚本:杉原憲明
出演:中村ゆり、斉藤陽一郎、桐生コウジ、染谷将太、菊地凛子、山本剛史、松本若菜、柳憂怜ほか。
(C)2015オフィス桐生

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