マキタスポーツ、“エロのインフレ”が起きていた『みんな! エスパーだよ!』の現場を振り返る

マキタスポーツ、エロを語る

「今でも『若い時に売れておきたかったな』って思う」

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——なるほどねぇ。改めて思うんですけど、今、マキタさんはものすごく充実したキャリアを送っていて。もし20代や30代でブレイクしていたら、きっと今のマキタさんとは全然違った場所にいたと思うんですね。

マキタスポーツ:そうでしょうね。

——その、「40過ぎてからのブレイクすること」の長所と短所について、最後にお訊きしておきたいんですけど。

マキタスポーツ:でも、僕は若い時に売れることに越したことはないと思うんですよ。若い時に売れていれば、それだけ失敗する機会も多かっただろうし、その失敗から学んでもう一回、もう二回とトライすることもできる。僕が40過ぎてからこうして仕事に恵まれだしたというのは、これは自分にとっての必然だったとは思うんですけど、今でも「若い時に売れておきたかったな」って思うし、今売れて良かったなっていうより、そっちの気持ちの方が大きいですね。

——あぁ、そういうものですか。

マキタスポーツ:結局、自分は憧れていたイメージ像にはなれないんですよ。これは誰にでも言えることで、ミュージシャンの人も、自分が憧れていたミュージシャンには絶対になれない。むしろ、憧れなかった人の方に、自分にとって大切な気づきのようなものがある。僕はずっと憧れていた自身のイメージになろうっていう、そういう理念、観念に縛られていて、それにはなれないということに気づくまでにすごく時間がかかったんですね。それははっきりと「悔い」として今もありますね。

——先ほど言っていた「自分にとっての必然」というのは、そういうことなんですね。

マキタスポーツ:そうです。あとは、本当につまんないことを言うようですけどーー。

——はい(笑)。

マキタスポーツ:今はもう、体力勝負です。自分のアイデアがいくらあったとしても、それに肉体が追いついていかないっていう、それが一番嫌だから。やっぱり自分の原点は「誰からも期待されていない」ってことなんですよ。誰からも期待されてないし、誰からも仕事を発注されてないのに、自分がやりたいからやるっていう。そういう時代があまりにも長かったから、その頃の「ただやりたい」というエネルギー、童貞感のようなものがなくなっていくことがすごく怖くて。ただ、「そもそも俺は何がしたいんだ?」っていう欲の部分、それはまだ自分の中に確かにあるので、あとは体力ですね。魂は肉体があってこそなので、身体のことは気にかけてますね。

——じゃあ、人知れず、身体を鍛えられていたり?

マキタスポーツ:いや、特に何もやってないです(笑)。

(取材・文=宇野維正)

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■公開情報
『映画 みんな!エスパーだよ!』
公開中
原作:若杉公徳「みんな!エスパーだよ!」(講談社『ヤンマガKCスペシャル』所載)
監督:園子温『ヒミズ』『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』
出演:染谷将太 池田エライザ 真野恵里菜 マキタスポーツ 高橋メアリージュン 安田顕
配給:ギャガ
公式サイトURL:esper-movie.gaga.ne.jp
(C)若杉公徳/講談社 ©2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会

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