にゃんこスター・アンゴラ村長が読む、シェア型書店×猫の小説『書棚の本と猫日和』 「採用するお店が出てきて欲しいな」

『書棚の本と猫日和 雨上がりの空と明日への栞』
(小説:佐鳥理・イラスト:わみず/ことのは文庫)

 書店内の書棚の一区画を借りた“棚主(たなぬし)”が、自分の好きな本を並べて販売する“シェア型書店”。新たなビジネスモデルとして、近年日本国内でジワジワと広がりを見せているのだが、今回はそんなシェア型書店を舞台にした小説『書棚の本と猫日和』(佐鳥理/ことのは文庫)を取り上げたいと思う。

 本作は、現在2巻まで刊行されているシリーズもので、東京・新宿にあるシェア型書店「フレール」の棚主たちに焦点を当てた物語。そして、タイトルにもある通り“猫”が大いに活躍する作品となっている。第2巻では、保護猫の譲渡会や保護猫ボランティアの現状なども描かれ、同巻の重要局面に。保護猫活動の経験を持つ、にゃんこスター・アンゴラ村長も、じっくりと読み込んでくれた。

舞台は“シェア型書店”! テーマの新しさに驚嘆

にゃんこスター・アンゴラ村長

――本書を読んでみての感想から教えてください。

アンゴラ村長:まず、シェア型書店という形態の書店があること自体知らなかったので、これをテーマにした小説がすでに存在するんだ! という驚きがありました。シェア型書店には、棚ごとに異なる“棚主”がいて、その人によって選ばれた本が並ぶそうで。それぞれの棚からそれぞれの価値観が見える面白さも感じました。

――棚主は、「この本が好きだから他の人にも読んでもらいたい!」という意図で本を置いているのも面白いですよね。好きなら大切にとっておくものだと思いがちですが。

アンゴラ村長:たしかに。自分の人生をちょっと削って、誰かに奉仕しているみたいな発想ですよね。

――棚主、興味が湧きましたか?

アンゴラ村長:湧きました! でも、自分の頭の中を見せるようなものなので……あえて統一感のない本を並べて、天才と思わせたいです。例えば、火星の本とウサギの本とか、土の作り方とアンガーマネジメントとか。そうしたら、「こいつの選書、奇抜すぎる。天才かもしれない……!」って、なりそうですよね? 実際は何も考えていないのに(笑)。

――確かに(笑)。かませそうですね。

アンゴラ村長:ですよね(笑)。作品の話に戻ると、エピソードごとに主人公が変わって、オムニバスのような形式で物語が進んでいくのも面白かったです。第1巻・第1話の主人公は、聡子さんという美容師の女性で、その人が「フレール」というシェア型書店に入るところから物語がはじまるんですけど、その話の中で、フレールのとある棚を借りている棚主さんにフォーカスがあたるんです。すると読者は、「この棚主さんは、なぜこの本を置いているんだろう?」と、棚主さんのほうも気になりはじめるんですよ。そうしたら、第2話ではこの棚主さんの話に切り替わる、という。

――それ以外にも、別の棚主やフレールのオーナー、棚主が書いた本の読者などが主人公になるエピソードもあって、フレールの全貌や物語の輪郭がどんどんはっきりしていくから気持ちよかったですね。

アンゴラ村長:作者の佐鳥理さんは、なんでこんなに大勢の人を書き分けられるんだろう? と、恐ろしく思ってしまいました。次の話に切り替わるだけで、こんなに別人を書ける佐鳥さんの脳ってどうなっているんだろう?って。

――(笑)。本書の編集者曰く、佐鳥さんは日頃から人間観察をよくしているそうです。それが活きているのかも。

アンゴラ村長:なるほど……! それにしてもすごいですけどね。

――アンゴラ村長さんがとくに共感できた登場人物はいますか?

アンゴラ村長:第1巻に登場する、恵美子さんです。岡山県のとある街で、娘と孫娘と暮らしているおばあさんなんですけど、すごく私っぽいなと思ったんですよ。「老後の私っぽいな」って。

――というと?

アンゴラ村長:散歩が好きなところとか、散歩しながら好奇心が赴くままに行動しちゃうところ、ですかね。読んだ本に出てきた料理を作ってみるところも、「っぽいなぁ~」と思いながら読んでいました。あと、言いたいことはあるけれど、その場を丸く収めるためにあえて言わないところも、ちょっと共感できました。相方のスーパー3助は、言葉の表面しか受け取れない人なんですよ(笑)。なので、相方のためになることでも「今は何を言ってもダメだろうな。やめておこう」と諦めることがあるので、その場面は「あ、ちょっとわかる」と思いながら読みました。

譲渡会、寄付金……リアルに描かれた保護猫の現状

――第2巻・第4話は、フレールで保護猫の譲渡会を開くエピソードとなっていました。この話を読んだ感想も教えてください。

アンゴラ村長:フレールは、オーナーの桜井さんが飼っている「すみ」や、第1巻・第2話の主人公・凛太郎くんが飼っている「ちよ」という2匹の猫が出入りしているんですよね。なので、看板猫がいる書店という利を活かし、店内で保護猫の譲渡会を開く展開は、個人的に「ありがとうございます!」でした。

――アンゴラ村長さんといえば、つい最近まで『嗚呼!!みんなの動物園』(日本テレビ系)で保護猫のコシマさんを預かる様子が放送されていましたし、保護猫ボランティア側の目線になってしまいますよね。

アンゴラ村長:その番組内で、「猫の森」さんという保護猫ボランティアがやっている譲渡会に行かせていただいたことがあるんですけど、「猫の森」さんはこれまでのとんでもない積み重ねがあるので、設備が整っていますし、スタッフさんも大勢いて。譲渡会も、ホームセンターの空きスペースといった好立地で開くことができるから、3時間の譲渡会でもひっきりなしに人が来て驚きました。

 一方で、私が猫を飼おうと保護猫ボランティアをめぐっていたときに行った譲渡会では駐車場を譲渡会場にしていて。私以外に猫を見に来ていた人は1、2人いるかいないかくらいの状況でした。そのくらい、お客さんを集めるのが難しい譲渡会も多いんですよ。この現状を知っているので、フレールの話題性や人気にあやかって譲渡会をやらせてもらえるのは、施設にとってもありがたいことだと思います。

――本書には「百人来場しても、一匹も(譲渡が)決まらないこともある」とも書かれていました。シビアな世界ですね。

アンゴラ村長:そうですね。コシマさんは2回譲渡会に参加しているんですけど、1回目はまだ放送されて間もない時期だったことと、大人の猫だったこともあって、見てくれる方がものすごい多いわけではなくて……。やっぱり子どもの猫の譲渡は決まりやすいのですが、大人の猫はコシマさん含めあまり決まらなかったんです。そもそも、大人の猫のエリアに来てくれる人たち自体が少なくて、「今日、人の背中ばっかり見ていたな」と思ったのを覚えています。性格が決まっている大人の猫の譲渡は、飼い主との相性が重要だとわかっていますけど、それでも悲しかったです。

――本書の第2巻・第4話には、シオンという大人の猫が登場しますが、シオンも飼い主が決まらずいつも施設に戻ってきてしまう猫でしたね。

アンゴラ村長:そう、本当に難しいんですよ、大人の猫の譲渡って。「もはや、ぴったりと相性の合う飼い主が現れるまで待つしかない。運命待ちなんです」……と、普段から預かりボランティアをされている方に聞いたことがあります。

 それでいうとシオンは、最終的に運命の相手・油井さんに出会えて、よかったですよね。もともと油井さんは、昔飼っていた愛猫・アルストロメリア以外を迎え入れるつもりはありませんでしたけど、少し心が揺れ動いている時期だったから、シオンと暮らすことを決めた。ちょっとでもタイミングが違っていたら一緒にならなかったと思うと、すごく運命的な出会いだったんだなと思います。

インタビューは真剣に、撮影はノリノリで臨んでくれた。

――保護猫たちがその運命にたどり着くためには、より多くの人に知ってもらい、譲渡会に来場してもらうことが大事なのでしょうね。

アンゴラ村長:そうですね。妥協できるものではないですから。猫の一生、むこう20年が決まる話ですから。一人でも多くの人に知ってもらって、譲渡会に来てもらうのが第一歩だと思います。

――「スタッフが足りない」「活動資金が足りない」「譲渡会を開いてもなかなか人が集まらない」といった、保護猫ボランティアの現状を広く知ってもらうことも重要だと感じました。本書を読んだら、なおさら。

アンゴラ村長:実際、『嗚呼!!みんなの動物園』といった動物番組のおかげで、保護猫や施設の認知度はかなり上がったと思います。けど、経営がままならない施設はまだまだあるんです。SNSに「この口座にご支援をお願いします」「○○が足りていません」といった投稿をしている施設も多いですから。綺麗事では運営できない、まずお金が必要なんだということをもっと広く伝えられたらと改めて感じました。

 そういえば、フレールでの譲渡会は、本の売上の一部が保護猫ボランティアの寄付金になるという試みも行っていましたけど、あれ、いいですよね。

――どこかの書店でやっていてもおかしくないシステムですよね。

アンゴラ村長:そう! とってもリアルです。桜井さんや凛太郎くんが、すみやちよを書店に連れてくるくだりは、ある種“フィクション的”だと思うんですよ。お店ってどうしても人の出入りが多くて、性格上連れてこられない猫は多いはずなので、そこはあえてフィクションとして見せているのかなと感じましたけど、寄付金のシステムはとてもリアリティがありました。「採用するお店が出てきて欲しいな」と思うくらいでしたね。

 あと、お店の出入口に脱走防止柵がないのもフィクション的、なのかもしれません。普通に読んでいても気が付かない気がしますが、リアルな話、家猫が外に出ちゃったら生きていけるわけがないので、脱走してしまったエピソードはヒヤヒヤしました……! もし、この小説に感化されて猫とお店をはじめる方がいたら、猫の性格を見極めることと、脱走防止柵をつけることは徹底してほしいですね。

他の誰でもない、菊次郎と一緒にいたい

――アンゴラ村長さんが保護猫活動をはじめたきっかけは、何なのでしょうか?

アンゴラ村長:きっかけは、『嗚呼!!みんなの動物園』で「預かってみませんか?」と声をかけていただいたことです。ただ……この話をいただくまで、私自身、保護猫ボランティアに関して「存在は知っている」程度でしたけれど。

――とすると、番組に勧められたとはいえ「やります」と答えるのは勇気がいりますよね。

アンゴラ村長:そうですね。当時すでに一緒に暮らしていた菊次郎がビビリだったので、「菊次郎のストレスになったらどうしよう」という不安もありました。だけど……思い返してみたんですよ。菊次郎を飼った理由は、“猫を幸せにするため”だったなって。

――猫を幸せにするため、ですか?

アンゴラ村長:はい。そもそも、コンビ名の「にゃんこスター」は、会社員として働きながら芸人をしていたその日暮らしの自分と、街で見かけた野良猫の姿が重なって、「ここから一緒に頑張ろう」「一緒に“スター”になろう!」という思いでつけた名前なんです。すると、ありがたいことに生活に少しだけ余裕が出てきて。「猫のおかげで世の中に知ってもらえたんだから、まずは1匹の猫を幸せにしよう」と思い、菊次郎を我が家に迎えたんです。

 なので、「保護猫を預かってみませんか?」と番組のスタッフさんから言われたときも、わりとすぐに菊次郎の延長として捉えることが出来て。自然と「やってみよう」と思えました。それから、ルナちゃんというミヌエットを預かって、譲渡して。次にキジシロのコシマさんを預かり、譲渡をしたところです。

――この先も、機会があれば保護猫活動を続けたいという思いはありますか?

アンゴラ村長:そうですね。預かりは大変なので、できる人が限られていますから。それに、私はYouTubeチャンネルを持っているので、預かっている猫がどういう性格で、どういうふうに家で暮らしているのか、広く伝えられると思っています。例えばコシマさんの譲渡先になった御夫婦は、“爪切りをさせてくれること”が大きな決め手になったそうなんですけど、そういう何気ない日常風景こそ、YouTubeなら伝えられると思うので。また預かることがあれば、活用したいですね。

――お話を聞いていると、本当に猫のことを考えていますね。

アンゴラ村長:もちろんです。でも、「もう、猫がいないと生きていけない!」という感じではないんです。菊次郎と実際に生活が始まってみたら本当に私と性格が合っていて、今は「菊次郎と一緒にいたいんだよな」という気持ちです。

――「猫といたい」のではなく、「菊次郎といたい」と。

アンゴラ村長:そうです。だから……悲しいですけど、もし菊次郎がいなくなってしまったら、もう飼わないかもしれません。そういえば、シオンを引き取った油井さんも、最初はアルストロメリアだから良かったと言っていたじゃないですか。あの気持ち、私はすごくよくわかります。

 クールで物静かですごく理性的な猫なんですけど、甘えん坊のギャップもあって、私が小道具を作っていると「頑張ってる?」とずっと見ていてくれる、菊次郎だからいいんです、私は。

にゃんこスター・アンゴラ村長

■書誌情報
『書棚の本と猫日和 雨上がりの空と明日への栞』
小説:佐鳥理
イラスト:わみず
定価:781円(税込)
出版社:マイクロマガジン社
特設サイト:https://kotonohabunko.jp/special/shodananeko/

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