「推し活できなくなる……」“書店ゼロ”の自治体、約27.7%に上昇 地方の“推し活”、どこが支えている?

■書店がなくなると地方での推し活はやりづらくなる?

地方だけではなく都心の書店も閉店が続く。2022年1月31日に閉店をした丸善ジュンク堂書店 渋谷店

 “書店ゼロ”の自治体は約27.7%―― 出版文化産業振興財団が発表した調査によると、全国1741市区町村中、書店が1店舗もない自治体が全体の27.7%に上り、482市町村に増加したことがわかった。これは今年3月の時点でのデータだが、半分以上の自治体に書店がないという都道府県も出現しており、約56.1%の沖縄県、約53.2%の長野県、約51.3%の奈良県などがある。

  ここ数年の深刻な問題は、県庁所在地の代表駅の駅前からも書店が減少している点である。甲府駅前などは2023年の一時期、事実上書店ゼロだった時期もあった。さらに、いわゆる物流業界の2024年問題によって、これまでも1日遅れだったことがあった新刊の発売日が、さらに延びるのではないかと不安視されている。さらに大手取次も、売れ筋の本ほど都心の大型書店に優先して配本しているため、地方で本を入手することは急激に難しくなっている。

■地方でも健闘している「アニメイト」の大きな存在

「アニメイト福井」は学生も多く訪れ、活気がある。同じビルには映画館も入っている。

  そんな中で、存在意義が高まっているのが、「アニメイト」だ。地方でアニメファンが“推し活”をする上で、とにかくアニメイトは欠かせない存在になりつつある。何より、駅前から老舗書店や大型書店が次々に撤退している中でも、アニメイトは健在であることが多い。なかなか老舗書店には配本されないマニアックなタイトルも、アニメイトなら問題なく配本されるのである。

 アニメイトを訪れるとわかるが、とにかく店内が明るいため入りやすい。越谷レイクタウンやイオンモールなどのショッピングセンターにも多数出店しており、推し活がカジュアル化したこともあってか、従来のアニメファンのみならず家族連れなども多く来店している。こうした事情から、漫画の入手をアニメイトに頼っている地方民は、相当数多いのではないだろうか。

 地方から若者が離れる要因は様々あるが、筆者が思うに、「趣味の選択肢が狭い」ことが挙げられる。釣りやキャンプ、山登りなどのアウトドアをやるなら地方は最適だし、バンドの練習なども周りを気にせずに好きにできるなど、地方でしかできない趣味は確かにあるのだが、いわゆる“推し活”を地方でやるのは難しくなっている。有名人のライブも地方にはなかなか来てくれないし、イベントも少ない。東京に行こうと思うと交通費もかかるし、近年はインバウンドの増加で宿泊費も値上がりしている。

 こうした時代だからこそ、地方にアニメグッズを“見て買う”機会を提供してくれるアニメイトは貴重な存在といえ、地方民にとっては書店以上の存在感を増しているといえる。また、ふらりと立ち寄り、本との出合いを提供してくれる場としても欠かせない存在になっている。

関連記事