葛飾北斎の生涯とはどのようなものだったのか? 定説を覆す、大胆な仮説を描いた『気散じ北斎』

 けれども、本作の何よりの「読みどころ」は、そのクライマックスになるのだろう。本書の出版に合わせて、著者自らが「構想8年、取材と考証を重ね、各界の専門家の方々にご意見を賜りながら、これまでの定説を覆す、大胆な仮説を立てて書き下ろしました。私が追い求めていた北斎とお栄の関係を、ようやく世に出すことができます」とコメントしているように、本作の最後には読む者をみな驚かせる、実に大胆な「仕掛け」が用意されているのだった。多くの謎に満ちた生涯であるがゆえに「そうであったかもしれない」可能性に満ちた本作。それもまた、歴史を楽しむひとつの醍醐味なのだろう。

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