Twitterで人気爆発『王様ランキング』がアニメ化でさらにファンを獲得するワケ 共感を呼ぶ“大人の絵本”の魅力
大人向けの絵本のような作品
ボッジのキャラクターに魅力を感じる声が多く挙がったなか、作品の雰囲気から絵本に似た印象を覚えたという声も見られた。たしかに、デフォルメの効いたキャラクターデザインは幅広い年齢層の視聴者が親しめる造形であり、街中をボッジが上半身に服を着ずに歩く姿は童話『裸の王様』を彷彿とさせる。
作者の十日氏は絵本作家を目指していた人物であり、インタビューで当初は「絵本っぽいマンガを描きたい」という気持ちがあったことや、『あらしのよるに』などで知られる絵本作家あべ弘士氏のような絵が描きたいと思い、自分の絵を模索していたことを話している(参考:遠回りが実ったマンガ家への道「王様ランキング」十日草輔(goriemon)インタビュー)。
また近年は哲学的なテーマを題材とした絵本など、巷では大人向けの絵本も数多く発表されている。つよさがランキング化される世界で最も立派な王様を目指すボッジの姿や、多様な背景や思いをもったキャラクターの存在は、大人向けの絵本と同様にわたしたちへ問いを投げかける。
音が聞こえないボッジをからかう町の子どもたちに、大人はどんな対応をするべきなのか。物語が進むにつれて明かされる王妃「ヒリング」の思いから、ボッジを罵倒する彼女の態度は間違っていると断言していいのか。周囲の人々から馬鹿にされ部屋でひとり涙を流すボッジに、どんな言葉をかけることができるのかーー。
親しみを覚えることのできる画風、そして大人にも学びや気付きを与える物語。まるで絵本のように多くの人が楽しむことができる点こそ、『王様ランキング』の大きな魅力なのであろう。
アニメーションを通じて表現される『王様ランキング』は、まるで原作漫画の読み聞かせを見聞きしているような感覚を覚えるものであった。木曜日の深夜に放送される本作のアニメは、まるで絵本を読み聞かせてもらうような安心感を与え、オープニングテーマ「boy」から言葉を借りるならば、日溜りの様なあたたかい夢にいざなってくれる作品と言える。