『東京卍リベンジャーズ』なぜ先輩を〝君付け〟で呼ぶ? 不良社会の人間関係を考察
「2010年頃、青年マンガ誌の別冊としてつくられたチーマー史を総括するムックから寄稿を依頼された際、編集の方に『今時、チーマーの本なんて誰が読むんですか?』と訊いたら、『ネットでバトル・マンガを考察するような感じで盛り上がってるんですよ。〝最強のチーマーは誰か?〟みたいな』という答えが返ってきて、なるほどと思いました。件の半グレ集団にしても、相関図をつくったり、強さをランク付けした記事が幾らでも見つかる。そういった不良キャラクター消費の中で、自分がその文化に詳しいことをアピールするため、面識がないのにも関わらずプレイヤーを親しげに〝君付け〟で呼ぶことはままありますね」
いずれにしても、『東京卍リベンジャーズ』における〝君付け〟には、同作をさらに楽しむヒントがありそうだ。
「ヤンキーマンガの面白さは、登場人物の関係の複雑さにこそあります。『東京卍リベンジャーズ』では、例えば〝君付け〟の親しげな雰囲気によって上下関係やいがみ合いが隠蔽され、むしろ読者の深読みを誘う。また、そこにタイムリープという要素が加わることによって、関係が何度もリセットされたり、拗れたり、更に複雑になっていく。そもそも日本語社会には、人称や敬語の多様さ、それに〝君付け〟や〝さん付け〟で人間関係をややこしくしていくようなところがあって、そのコミュニケーションは当然ストレスを感じさせるのですが、だからこそ人々はエンタテインメントを通して昇華しようとするのかもしれません」
会社の先輩や上司を〝君付け〟で呼ぶことを想像しながら読むと、たしかにますますスリリングな作品として楽しめそうだ。