Oasis完全復活の裏側、分断を超えて繋がった巨大な熱量 映画『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』を今観るべき理由

Oasis再結成ドキュメンタリーが必見の理由

15年にわたって蓄積された“Oasisを待つ声”の爆発、その巨大なるエネルギー

 会場に集まっていたのは、90年代から彼らを追い続けていた往年のファンだけではなかった。これまでOasisのライブを観たことのない、あるいは全盛期に生まれてすらいなかったような、若いファンが大量に集まっていたのだ。しかもその現象は、世界各国で同時に巻き起こっていた。

 伝説として語り継がれたバンドの再結成は、よく“同窓会”と揶揄されることがある。実際、ほとんどの再結成は解散前の勢いを取り戻すことはなく、ミュージシャン/ファンともに、年齢を重ねて余裕を手にした人々にとっての娯楽となることが少なくない。

 その点を踏まえると、ライブ初日の様子を振り返るギャラガー兄弟の言葉は、より興味深いものになるだろう。「リラックスした状態でいいライブができるように、6週間みっちりとリハーサルをする」と語っていたノエルが、予想を遥かに超えたカオティックなエネルギーに圧倒され、飲み込まれそうになっている。彼らが思っていたよりもずっと、ファンは“この瞬間”を心から渇望していたのだ。

Oasis プレミア

 なぜ、こんなことになったのだろうか。その問いを掘り下げるかのように、ドキュメンタリーの後半では、バンドからファンへと焦点が変わっていく。ツアーで訪れる世界各国の会場の様子とそこに集まる人々、さらにファン個人の生活にもスポットが当てられる。当時からのファンはもちろんだが、本作が特に注目するのは、今回の再結成で初めて彼らを目の当たりにした人々の姿だ。イギリスはもちろん、ブラジルやアルゼンチン、韓国など、言語や人種を超えて、一人ひとりの日常をOasisの楽曲が彩る様が描かれていく(個人的なお気に入りは、韓国編に登場する2人の若い海女の微笑ましい風景だ)。

 その中でもひと際強い印象を残すのが、イギリスの公演に参加したあるファンの姿である。その人物は、2017年にマンチェスターのライブ会場で起きた爆発事件の生存者だった。

 映画では、事件の回想とともに、被害者への追悼が送られた際に自然と「Don’t Look Back in Anger」の合唱が巻き起こったことに触れながら、この名曲がライブで披露される瞬間へと向かっていく。映画館のスピーカーを突き抜けるかのような凄まじい大合唱は、長年のファンにとっては見慣れきった光景かもしれない。しかし、「怒りを抱えたままで振り返るな(Don’t Look Back in Anger)」という言葉の持つ重みや、さまざまな違いを持つ人々が集まって、みんなで一緒に同じメロディを歌う喜びは、この15年ですっかり大きくなっていた。

Oasis プレミア
©2025 Harriet T K Bols

 個人的な話になるが、およそ1年前、何度も抽選に外れ、もう無理かと思っていた矢先になんとか引き当てた見切れ席のチケットを手に辿り着いた東京ドームで、初めてこの目でOasisを目撃したその瞬間、自分でも驚くほどに涙が止まらなくなってしまったのを、今でも鮮明に覚えている。「Hello」「Acquiesce」「Morning Glory」「Some Might Say」……と、一言一句欠かさずに歌える名曲たちが放たれると、涙は引っ込むどころかむしろさらに増えていって、気づけば数十分ほど泣き続けていた。

 上記の楽曲が発売された1995年当時、私は2歳で、実際に楽曲に触れたのは、それからずっと後のことだった。リアルタイムを経験していないのに、なんでこんなに感動してしまったのか、正直なところ今でもよく分かっていない。ただ、一つ言えるのは、自分でも気づかないうちに、Oasisの楽曲が人生に欠かせないものになっていたということだ。劇中に登場するファンの多くもまた、そうした経験を語っている。

 バンドが解散していた間、権力者や富裕層は暴走を続け、世界の分断は加速し、制御不能なカオスが膨れ上がっていた(ドキュメンタリーでもこの点は強調されている)。その間、Oasisの楽曲は世代を超えて愛され、時には力を、時には癒しを与え続けていた。そうして長年にわたって蓄積されたエネルギーが、今回の再結成でついに解き放たれてしまったのである。今回のドキュメンタリー映画は、その瞬間を丁寧に捉えている。数年後に本作を観返した時、果たして私たちは何を思うのだろうか。

 今回の映画の見どころでもあるギャラガー兄弟揃ってのインタビューで、若かった頃とはいろいろなことが変わってしまったことをしんみりと語ろうとするノエルに対して、リアムは笑いながら「つまらない話をするな」とバッサリ切り捨て、兄弟で笑う一幕がある。これは、仲睦まじい今の2人の姿を象徴すると同時に、Oasisらしさが詰まった名場面と言えるだろう。

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 先日、『第83回ヴェネチア国際映画祭』や、イギリス・ロンドンで開催されたプレミアイベントでも、久しぶりにギャラガー兄弟が揃う場面に注目が集まっていたが、劇中ではそれ以上に2人の“仲良しカット”が盛りだくさんだ。観れば観るほど「この15年間は何だったんだろう?」と思わなくもないが、今回の再結成を成功させるためには、きっとこの時間が必要だったのだろう。

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 いろいろあったけれど、お互いを許して、とっとと前に進む。いい曲を爆音で聴いて、合唱して、明日からも働き続けるための糧にする。「あの頃はよかった」とノスタルジアに浸るような余裕は、残念ながら今はない。だが、こんな時代にこそ、Oasisというモンスターはもっとも真価を発揮するのだ。映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』は、あるバンドの再結成を捉えたドキュメンタリーであると同時に、今を生きる私たちの姿を捉えた作品でもある。

 ところで、ちょうどこの原稿を書いている時、あるニュースが入ってきた。どうやら、まだOasisは終わる気がなさそうである。ならば、付き合うしかないだろう。

 
 
 
 
 
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■作品情報
映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』
公開:2026年9月11日(金)~2週間限定公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
作品詳細:www.disney.co.jp/movie/oasis

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