ONE OK ROCK、過去の悔しさへの落とし前、さらなる高みへと突き進むための夜 『DETOX』ツアーで遂げた進化

ONE OK ROCK『DETOX JAPAN TOUR FINAL 2026』の最終公演が、9月6日、ZOZOマリンスタジアムで開催された。足かけ1年半にわたり続いてきた長いツアーの集大成で彼らが見せたのは、2025年8月に日産スタジアムで観た時(※1)とはまるで違うパワーを宿したONE OK ROCKの姿だった。さまざまな出来事を経て、心身ともに削りながら走り続けてきた彼らは、またひとつタフなロックバンドへと進化した。それをまざまざと見せつける、最高のファイナルだった。


この日、天候は雨。それも小雨などではない、本格的な雨が降り続いていた。だが、スタジアムに集まったオーディエンスは、そんな悪天候にも負けず、声を挙げ、さらには自然発生的にウェーブをやり、開演前から気分を盛り上げていた。そんなオーディエンスを白く眩い光が照らし出す。そこに浮かび上がったTaka(Vo)のシルエットが、「Fight the night」を歌い始めた。この日の光景にあまりにもぴったりな〈Here comes the rain〉というフレーズは、世界にはびこる痛みや傷のメタファー。「新たな一日を迎えるまで戦い続けるんだ」と繰り返すこの曲で、ライブは始まった。Takaと同様にToru(Gt)、Ryota(Ba)、Tomoya(Dr)のシルエットも照らし出され、静と動のダイナミズムが徐々に熱を帯びていく。そして、神秘的なSEを挟んでTakaが叫ぶ。「本日が最終公演になります。準備はできてるか!」。もちろん、という意味の大歓声のなか、「Taking Off」へ。パワフルなリフとリズム、そして〈We’re taking off together〉というメッセージ――そのビッグなサウンドが飛び込んできた瞬間、このライブの意味合いがわかった気がした。これはツアーの単なる延長戦でも、凱旋パレードでもない。最も気心の知れた仲間たちとともにさらなる高みへと突き進むための夜なのだ、と。



スクリーンに歌詞を映し出すなか、飛び跳ねながら弾くToruとRyotaに合わせて一面のジャンプが広がった「Prove」、シンガロングはもちろん、モッシュやクラウドサーフも巻き起こした「The Beginning」、イントロのリフが鳴り響いた瞬間から会場が沸いた「Make It Out Alive」。ライブは序盤からとんでもない熱量で進む。「Puppets Can’t Control You」では大量の火とスモークがステージから放たれ、場内の高揚をさらに煽る。さらに赤いレーザーが放射されるなか「Liar」へ。Ryotaが一心不乱にベースを弾き、Takaも渾身の歌を轟かせる。Tomoyaのドラムプレイも、まるで鬼神のようだ。「このセットリスト、20代」。ようやく訪れたインターバル、Ryotaがそう言って笑った。「40歳手前になって、ギリギリでこのセットリストやってます(笑)」――そんな言葉で笑いを誘いながら、おもむろに昨年がバンドの20周年だったこと、その時点では加入から19周年だったTomoyaも今年で20周年であることを伝えるRyota。「Tomoya、20周年おめでとう! 本当にありがとう」と言う彼に、Tomoyaも笑顔を返す。そのTomoyaは「とことんいこうか、今日は!」とオーディエンスを煽って元気いっぱいである。Toruは「大丈夫ですか?」とずぶ濡れのオーディエンスを気遣いながら、「帰ってきたよ!」とこちらも満面の笑みである。Takaは「俺、意外とこの雨嫌いじゃないんだよな」と言う。「ファンは鏡、歌は光、雨はシャワーって感じ。今日はこの雨すらも味方につけて、一滴一滴がみなさんにとって幸せの一滴になるように頑張るので」という言葉に、ますますオーディエンスのボルテージが上がる。


続けて彼は長いツアーを巡ってきた感慨を口にした。「『DETOX TOUR』、世界中まわって、いろんな経験をさせてもらいました。僕自身も正直ツラかったし、こんなにツラいツアーは今まで僕ら味わったことがなかったです。今日は日本に帰ってきて『ただいま』を言うツアーだと思っています。僕らの今日の死に様を観て、帰っていただきたいと思います」。彼があえて“死に様”という言葉を使ったのは、ここで『DETOX』のフェーズを終わらせてその先に進んでいくためだろう。そして、その言葉を証明するように、ここで新たな挑戦が行われた。Taka曰く「裏『DETOX』」というアコースティックセクションだ。RyotaがToruとともにアコースティックギターを弾き、Tomoyaはカホンを叩く。なんとRyotaは、ライブ1週間前にTakaに「アコギ弾いてくれない?」と言われたらしい。先ほどまでのバチバチのムードとはまったく違うリラックスしたムードのなか(Takaがマイクに止まったカナブンを見て「カナブンが飛んできた!」と笑っていた)、いつもとは違う「Delusion:All」と「The Pilot </3」が披露される。どちらの曲も歌詞に宿るリリシズムやセンチメント、もっと言えば悲しみや絶望がぐっと迫ってくる。それはまるで、傷だらけになりながら走り続けてきたツアーの裏側にあった感情を浮き彫りにするようだった。


次の「Tropical Therapy」から、ライブは新たな局面を迎える。楽器隊3人によるインストが鳴り響くと、ステージが暗転。次の瞬間、上手の端でギターをかき鳴らしたのはPaledusk・DAIDAIである。彼がギターを弾きながらやってきたステージ中央には、Paleduskのほかのメンバー、さらにCHICO CARLITO、そして巨大なフラッグを担いだAwich。そう、彼らとONE OK ROCKが組んだ新たな“バンド”――YAOの面々だ。この大所帯で挨拶がわりの「777」をぶち上げると、Paledusk・KAITOが「YAOです、はじめまして!」と叫ぶ。「このツアー、俺ら新米バンドなんでメンバー紹介とかしてきたんですけど、もういらないでしょ? みんな知ってるよね?」。そして、YAOの最新曲「ありふれた世界の果てに」が披露される。「歌ってくれよ!」というTakaの声に、冒頭から巨大なシンガロングで応えるオーディエンス。「イーヤーサーサー!」の掛け声が、雨空に広がり、美しいユニティを描き出した。さらにAwichも加わったYAOバージョンで「C.U.R.I.O.S.I.T.Y.」を届けると、このセクションのラストはONE OK ROCK「One by One」でのスペシャルなコラボレーション。オリジナルより何倍も厚みと鋭さを増したこの曲が、ONE OK ROCKにとってのYAOという存在の大きさをはっきりと伝えていた。


「よーし、暴れるの終わった……じゃねえんだよ!」。仲間たちが去ったステージで、Takaはますます猛々しく叫ぶ。事実、新たな刺激を受けて、ONE OK ROCKはここからさらに凄まじいライブを繰り広げていった。投下されるのは、さまざまな楽曲を矢継ぎ早に披露していくメドレー。「Bombs away」に始まり、「Deeper Deeper」と「69」のマッシュアップあり、「恋ノアイボウ心ノクピド」あり……とあまりにも贅沢な構成は、バンドをサポートし続けてきた日本のファンへの恩返しであり、同時に過去の悔しさ(Takaは、この地に初めて立った『SUMMER SONIC』も、コロナ禍で行った無観客ライブも悔しい思いをしたと語っていた)への落とし前でもあった。メドレーを終えたTakaは「今日で清算できました」と清々しい表情。そうやって過去にケリをつけ、『DETOX』に込めたものも、YAOに象徴されるこの先の未来もすべて見せつけながら、ライブはいよいよ最終盤に入っていった。「まだいけますか? なんてったって最終日だからな!」とさらにギアを上げるTaka。Tomoyaが「+Matter」のビートを叩き出し、スタジアム中のオーディエンスが体を弾ませる。さらにアリーナもスタンドも全員でしゃがみ込み、Takaの合図でジャンプして「Stand Out Fit In」をスタート。巨大な会場が完全にひとつになった光景に、Takaも「素晴らしい!」と声を上げた。そして、スクリーンに美しい星空が広がるなか「Wasted Nights」を歌い上げると、ライブ本編は終了したのだった。


だが、そうやってライブが一旦の幕切れを迎えてもなお、まだまだZOZOマリンスタジアムにはエネルギーが充満していた。しばらくして、再びTomoyaの大きなビートがスタジアムに鳴り渡る。アンコール1曲目、束の間のインターバルを経て、またしても会場をひとつにつないだのは「We are」だ。Takaはステージを降り、アリーナを走る。ToruとRyotaも下に降りてオーディエンスのすぐ近くで演奏している。アリーナ最後方にあるプレハブの屋根の上に立ち、オーディエンスを見渡したTaka。雨で濡れたプレハブの屋根は、おそらくパフォーマンスに適した場所ではないだろう。だが、彼が立ち、オーディエンスがすぐ近くで大声を張り上げながらその歌に感激しているのを観ていると、無機質なプレハブが立派なステージに見えてきた。


曲を終えると、彼は今度はステージに向かって走り始める。そこに聞こえてきたのは「キミシダイ列車」のイントロ。「おまえが生きているその時間、すげえ短いんだよ! だから無駄にしないでくれ!」。Takaのメッセージに、怒号のような歓声が起こる。そして巨大なサークルやウォール・オブ・デスまで出現した「Mighty Long Fall」を終えると、今度こそ、本当に最後の曲だ。「おまえらの記憶にしっかり刻み込んでいくからな!」という言葉に続き、Takaはこう叫んだ。「誰がロック界でナンバーワンのバンドか、わからせてやる!」――そして鳴らされたのは、「完全感覚Dreamer」だった。「俺はまだいけるぞ」「そんなもんじゃねえだろ? かかってこいよ!」。Takaのオーディエンスを煽る声が、ますます彼らを手のつけられない狂騒へと煽り、最高潮を記録し続けてライブは終わったのだった。
すべてを終え、力を出し切ったというように後ろを向いて座り込んだTaka。その横にToruが座り、Takaの肩を優しく抱く。RyotaとTomoyaもそこに加わった。4人の背中がスクリーンに大写しになる。世界を股にかけるロックバンドとなった今も、この4人には20年前と同じ空気が流れている。それを象徴する一幕が、とても感動的だった。その後、ひとしきりファンと交流すると、最後にはYAOのメンバーも呼び込んで全員でフィナーレ。それぞれにハグしたり、笑顔を交わしたり、ステージ上には最後までお互いへの愛が満ちていた。
※1:https://realsound.jp/2025/09/post-2157609.html



























