次世代のスーパースターはここから生まれるーーHIPHOPシーンの新たな才能が集決した『Singularity Next』レポート

WWWβ ステージ(Text by 渡辺彰浩)

UNSAID

 WWWβのトップバッターを飾ったのは、日本と韓国を拠点に活動するUNSAID。韓国での練習生経験、幼少期をメキシコ・コスタリカで過ごすなど、多様な文化から受けた影響をベースにして、「言葉にできなかった感情」をテーマにするラッパーだ。ネルシャツとキャップを組み合わせたヒップホップスタイルを取り入れたストリートコーデで現れたUNSAIDは、「Who is UNSAID?」で“自己紹介”を始めると、今月リリースされたばかりの新曲「SONAR」を披露する。彼の特徴は、日本語・英語・韓国語を巧みに使い分けるラップスキルだ。

 夢に葛藤する日々を〈I’m a SONAR〉という叫びとともに歌った「SONAR」だけでなく、インダストリアルなサウンドに乗せ浮き沈みする心情を綴った「C0MP4SS!」、レースの緊張感を音とリリックに表現した「Sector 1」、そして〈네가 꿀이라면 난 벌이지(君が蜂蜜なら、俺は蜂だ)〉というストレートな歌詞が響く「CANDY」でもUNSAIDは3言語を自由に行き交う。序盤は緊張感の見えるパフォーマンスではあったが、終盤ではしっかりとフロアを縦に揺らしていた。

SAEKI HOSHIYA

 UNSAIDからシームレスにステージを繋いだのは、オーディション「Road to WWW:2026 Season」を通じて出演権を手にしたSAEKI HOSHIYA。トレードマークであるマンバンヘアに、白シャツ、サングラスといった爽やかな出立ちで、メロウなナンバーを次々と投下していく。「みなさんでこのフロアを熱帯夜にしましょう!」と投げかけたサマーチューン「熱帯夜」では、無機質な地下室のフロアに熱を生んでいった。

 「今日は友達と来たって人どれだけいますか?」「横にいる友達、当たり前じゃないんで大切にしていきましょう」とメッセージを送った「Only Best Friends」、思いを真っ直ぐに言葉にした「Into You」と披露する頃には、「もう一歩ずつ前に詰めて」とアナウンスするほどに、フロアには大勢の人が集まって来ていた。〈何か足りないよ 例えばミッキーのいないDisneyland〉というリリックが印象的な「大人」で歌うのは、成長するに連れて変わっていく周りの環境に抱く葛藤や焦燥感。それを嘆くのではなく、全てを糧にして今を、未来を生きていこうとSAEKI HOSHIYAは言葉を紡ぐ。現在リリースに向けて制作中だというEPからいち早く届けられた新曲「One Coin」でも、「大人」とリンクするような一貫とした彼の思いが込められている。サングラスを外して見えたSAEKI HOSHIYAの目には、確かな覚悟が滲んでいた。

源治麿

 WWWのフロアで早くからほかのアーティストのライブを楽しんでいた源治麿。丸刈りにメガネ、そしてアントニオ猪木の闘魂Tシャツ。否が応でも目立つ。そんな彼の姿を目撃してか、ライブが始まる前からフロアは源治麿を一目見ようというオーディエンスでいっぱいになっている。1曲目は「To Con」。〈チー牛でも上手けりゃA5〉というパンチラインが炸裂する、冷笑に対して歌ったカウンターソングだ。

 有線マイクのコードを手繰り寄せる仕草やしきりに水を飲んだりと緊張が垣間見えつつも、ライブが進むにつれ気づくのは、そんな自身のプレッシャーをもプラスの力に変えようという源治麿のスタンスだ。それはまるで、がなり声や声の裏返りさえも、武器にしてしまうような。源治麿という名前が知れ渡るきっかけとなった「Piledriver」終わりには、自分を奮い立たせるかの如く絶叫。予定されている関西でのライブを告知し、「全員食ったろうと思ってるんで、俺が」と宣戦布告をすると、「まじですげぇぞと言わせて、今日は終わる」と宣言し「Dad Blood」へ。ラストはその場に膝から崩れ落ちる渾身のマイクパフォーマンスで集まったファンをロックした。

Sitissy luvit

 「ナイス、Piledriver」と源治麿のライブにリスペクトを送る、Sitissy luvit。MCバトルでの輝かしい実績をはじめ、先の3人に比べると数えきれないほどの場数を踏んできたluvitのパフォーマンスは一味違う。DJ Mitsu the BeatsがプロデュースしたEP『Kinyongia -キニヨンジア-』から「Let Me Out」、そしてドロップしたばかりの新曲「扉」で、巧みなフロウと源治麿にも負けない熱量を放っていく。即興のフリースタイルを披露するも、思いの外リアクションのないフロアにぼやく余裕すらあり。だが、luvitは心ここにあらずだった。仙台に一人残してきた愛する彼女から泣きの電話があり、話を聞くと家にこうもりが3匹飛んで来たのだという。直前まで害虫駆除の業者と電話対応をしていたluvitは、こうもりが風水的には幸運のしるしだと自分に言い聞かせる。

 「このままだと“バッド”なんで盛り上がっていこうぜ」とヘッズに呼びかけ、客演に“こうもりみたいなやつ”ことVino Jumeを迎え、「AXL FORM」を披露。フロアのヴァイブスを味方に頭のこうもりも消えてきた頃、最後の曲にパフォーマンスしたのが「Mix & Match」だった。フィーチャリングは、ライバルにして盟友のクボタカイ。軽やかにして熱い、2人のヴァースのやり取りが初めてフルバージョンで披露された。WWWβのトリに相応しい濃密な15分のライブアクトだった。

Trigger Records 公式X:https://x.com/TriggerRecords_
Trigger Records 公式HP:https://trigger-records.com/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる