「両極端なことをやれば最強になれる」 HANAを支えるギタリスト 小金丸慧、極めたメタル道 出会いが変えていく人生

小金丸慧、メタルを極めるなかでの変化

【連載:個として輝くサポートミュージシャン】小金丸慧

 メタルとジャズをルーツに持ち、テクニカルかつアヴァンなアプローチで強烈な存在感を放つギタリストの小金丸慧。洗足学園音楽大学のジャズコース在籍時に結成したMysterious Priestessで国内外のメタルシーンで活躍しつつ、2010年代後半からは高円寺百景や是巨人に加入し、日本のアンダーグラウンドシーンでも活動。徐々にサポートミュージシャンとしての活動をスタートさせると、2024年には在日ファンクの新メンバーに抜擢され、現在ではHANAのバックバンドに参加。さらには梅井美咲やMeg Bonusといった次世代の俊英の作品やライブにも関わるなど、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドを縦横無尽に行き来している。何でも器用に合わせられるより、むしろ極端な方が多くの人に求められる。そんな時代感を体現する小金丸に、これまでの歩みを聞いた。(金子厚武)

「メタルをもっと拡張させたい」という衝動

小金丸慧

――ギターを弾くようになったのはどんなきっかけでしたか?

小金丸慧(以下、小金丸):中学3年生のときに、「文化祭で演奏したい」と思ったのが最初のきっかけです。僕はその頃L'Arc-en-Cielが大好きで、彼らの曲をやりたかったんですけど、自分も周りの子たちも技術的に厳しくて、そのときは、Green Dayとかアヴリル・ラヴィーンをやりました。そこで「もっとギターを極めたい」と思ったときに、ドラムの子が音楽教室に通っていて、「マル(小金丸)も通えば?」って紹介してくれて。それで音楽教室に入ったんですけど、そこの先生がリッチー・ブラックモアみたいな、もうゴリゴリのハードロックおじさんで(笑)。教室の廊下にはずっとDEEP PURPLEが流れてて、最初はL'Arc-en-Cielがやりたかったけど、だんだんとリッチー・ブラックモアを「かっこいいな」と思うようになって。

――HR/HMの洗礼を受けたと。

小金丸:そこからはマジでメタル漬けでした。僕もDEEP PURPLEを聴かなきゃと思って、ブックオフで『Made in Japan』を買って、あのやたら長い「Child In Time」を頑張って聴く、みたいな(笑)。で、「やっぱり速く弾かなきゃいけない」というマインドになって、先生に教えてもらったポール・ギルバートやらジョン・サイクス、Whitesnakeにもめっちゃハマって、レブ・ビーチとか、あとはヌーノ・ベッテンコート、イングヴェイ(・マルムスティーン)とかですね。

――僕と小金丸さんは年齢が10歳以上離れてるんですけど、僕の中高生時代の話を聞いてるような感じがします(笑)。

小金丸:まったく世代じゃないんですけど、完全にその先生の影響ですね。音楽教室自体がみんな速弾きコース、HR/HMコースみたいな感じで(笑)。休日はみんなでイングヴェイやDEF LEPPARDの武道館ライブに行ったり。先生と生徒の仲がすごく良かったです。

――それ以外の休みの日は、部屋に引きこもって速弾きの練習をひたすらしてた?

小金丸:そうですね。高1か高2の夏休みには携帯を解約して、1カ月間まるっと山籠もりじゃないですけど、家にこもってひたすら速弾きを練習しました。『YOUNG GUITAR』(シンコーミュージック)の「ギタリスト総集編」みたいな特集を見ながら、ひたすらキコ・ルーレイロのリックをやったり、イングヴェイの手元がよく見えないような映像を観て、自分なりに研究してみたり。

――当時はバンドはやってなかったんですか?

小金丸:高校生までは文化祭のバンドだけで、あとは音楽教室か家でひたすら修行をしていました。あ、でも、高3のときにニコ動(ニコニコ動画)にオリジナルの速弾き動画をアップしたことがあります。マーティ・フリードマンが「バンドを組むから君たちの弾いてみた動画を上げてくれ」みたいな企画をやっていて、めちゃくちゃテクニカルデスメタル系な曲を出したら、「僕、デスメタルはあんまり好きじゃないんだ」ってコメントで言われて、落ち込みました(笑)。

小金丸慧

――(笑)。高校生までHR/HM一辺倒だったところから、洗足学園音楽大学のジャズコースに進んだのはどういうきっかけだったんですか?

小金丸:それまで本当に速弾きばっかりしていて、でもさすがにこれじゃダメだと思ったんです。で、音楽教室の先生に相談したら、洗足学園っていう音大があって、以前そこのジャズコースに生徒を入学させたことがあるという話を聞いて。で、いろいろ情報を調べていくうちに、“ジャズ”というまったく認知してなかったジャンルがあることを知って、メタルとジャズ、両極端なことをやれば最強になれるかもしれないと思ったんです。火と水の属性じゃないですけど、種類の違う真逆のものを混ぜて、それを自分がどっちも喰えば、もっと強いギタリストになれそうだなって。今思えば、「メタルをもっと拡張させたい」っていう気持ちの方が強かったかもしれないですね。

――メタルを拡張させるために、ほかの要素を入れる。

小金丸:基本にはメタルがあって、これはもう習うことは何もないから、ジャズとかを付随させて肉付けしていけばいいんじゃないかと。洗足の入試でもジャズスタンダードの「Billie’s Bounce」を速弾きしたり、(入学してからも)「枯葉」(シャンソンの代表曲のひとつ)もマイナーの曲だから、ハーモニックマイナーをひたすら連打してればアドリブできると思って弾いてみたり。入学してから最初はそんな感じだったから、学内でも“ヤバいやつ”で通ってたと思います(笑)。途中からは「これだけだとマズい」と思って、ストレイト・アヘッドなジャズスタンダードもかじってはみたんですけど、結局周りもジャズをメインでやってる人が意外と少なくて。

――“ジャズコース”とはいえ、いろんな人が集まっている。

小金丸:そうなんです。僕が大学で4年間師事していた道下和彦さんもバークリー(バークリー音楽大学)出身だし、ジャズの人ではあるんですけど、メタルにもすごく理解があって、「Animals As Leaders好きなの?」とか「ガスリー・ゴーヴァンもええけど、もっと面白いのもおるで」みたいな、逆に僕のメタルの部分をどんどんプッシュしてくれたり。あとは周りの先輩だと、一個上の伊吹(文裕)くんもインターネットっ子だったので話が合って、『けいおん!』(TBS系)のコピバンを学園祭で一緒にやったり、そこにSuchmosの小杉隼太(HSU)もいて、「ジャズはどこへやら?」みたいな(笑)。

――小金丸さんがリーダーを務めたメタルバンド・Mysterious Priestessも洗足の仲間と結成したわけですか?

小金丸:そうです。入学したらすぐにメタルバンドを組みたいと思ってたんですけど、ライブハウスをまわってメンバーを探すとか、そういう文化はちょっと違う気がして、「学内でジャズコースの人たちに無理矢理メタルをやらせよう」と思って。ジョン・ゾーンのNaked Cityみたいな、ビル・フリゼールが速弾きしたり、ジョーイ・バロンが叩くブラストビートとかが大好きで、ああいうのをやりたくて。僕の場合はジャズからのメタルじゃなくて、メタルからのジャズアプローチだなと思って、「メタルやりたいんだけど」と周りの人に声をかけて始めました。かなり強引だったと思います(笑)。

Mysterious Priestess - Seven Moons (official video)

――もともとメタル好きが集まったわけではなく、小金丸さんが引っ張っていった。

小金丸:そうですね。ほぼメタル経験ゼロか、昔好きでやってた、みたいな人たちで始まりました。のちにDC/PRGに入るドラムの秋元(修)は最初キーボードで誘ったんですけど、途中からドラムになったんです。大学4年間はそのバンドで頑張ってて、4年目でドイツの『Wacken Open Air』っていうフェスに出れたんですよ。メタルとニューヨーク系コンテンポラリージャズの融合みたいなイメージで、アメリカのThe Facelessっていうテクニカルデスメタルバンドと台湾で共演したり、一時期は「メタルで生きていけるかも」と思ったんですけど……甘くなかったですね。

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