時代に愛された麻倉未稀の歌 「大人の歌が歌えるような歌手」を追いかけた日々……45年の歩みと魂の行方

時代が求め、愛した麻倉未稀の歌

永井真理子&高橋洋子との絆「タイトルの響きが私たちにぴったり」

――60代に突入したばかりの40周年と比べると、また感じ方も変わる。

麻倉:そう。今まで歩んできた道のりがそんなに平坦ではなかったからこそ、45年も歌ってこられたのは奇跡みたいなものだなと思いながら、ふと前を見ると庄野真代さんが50周年を迎えられて。まだまだ先は長いですよね(笑)。ちょっと余談になりますけど、40周年の時は真代さんに曲を書いていただいたんですけど、今回は真代さんの「アデュー」という曲をカバーしているんですね。真代さんとはよくステージでご一緒することが多いんですけど、真代さんが「アデュー」を歌っていらっしゃる時に、私はステージ袖から観ていることが多くて。それで、MCでは「この曲は私が24歳の時に作った曲なんですよ」と言っていたんですけど、24歳でよく〈若くはないわ もう昔のように〉というフレーズが出てきたなとびっくりしたんですよ。その時の驚きや袖で聴いていた時の雰囲気が忘れられなくて、今回「アデュー」をあらためて歌ってみようと思ったんです。

――24歳で〈若くはないわ〉というフレーズが出てくるセンスや感覚、あらためてすごいですね。実年齢以上に大人びていると言いますか。70年代から80年代初頭までの歌謡曲やニューミュージックが、そうした大人びた世界を謳っていたのに対し、本作でも取り上げられている「フレンズ」や「M」のような楽曲の主人公は、もっと年齢が低い印象を受けるのが興味深いです。

麻倉:10代後半から20歳ちょっとくらいのイメージかな。時代が少しズレるだけで、歌のなかに登場する人物の年齢層もこんなに変わるんですね。

――その「フレンズ」では高橋洋子さんとデュエットしています。

麻倉:実は、彼女とはすごく仲良くさせてもらっていて。『オールスター合唱バトル』(フジテレビ系)という番組で、私と永井真理子ちゃんと高橋洋子ちゃんと3人一緒になることが多くて、それを機にごはんに行ったりもしていたんです。私がいちばん上なんですけど、みんな自然体でいられるぐらい馬が合う仲間たちなので、今回はお友達を代表して洋子ちゃんに参加してもらいました。実は、候補曲が2曲あったんですけど、歌詞の内容的にはちょっと違うんだけど、タイトルの「フレンズ」という響きが私たちにぴったりということでこちらを選んだんです。

――高橋さんの歌声がすごくかわいらしくて、驚きました。

麻倉:あの大人びた顔からああいう声が出てくるんだと思うと、ちょっとびっくりしますよね。レコーディング中もずっと、「かわいい声だよ!」って連発してたくらいですから。洋子ちゃんはアニメの楽曲をたくさん歌ってらっしゃるので、曲に合わせていろんな声色で出そうとするところでいろんな努力があるんだろうなと感心しました。

――また、今作では先ほど話題に挙げた「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」も新たなアレンジで収録されています。偶然ですが、この7月にボニー・タイラーがお亡くなりになったので、このアコースティックアレンジは胸にくるものがありました。

麻倉:実はこの「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」を録った翌日、に『スクール☆ウォーズ』のモデルとなった山口良治先生が亡くなられたと訃報が入ってきて。その前にも、『スクール☆ウォーズ』のプロデューサーさんが亡くなられてお別れの会があって、そこで(麻倉とライブで共演する機会が多く、「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO(アコースティックギターver.)」でも編曲とギターを担当した)長谷川友二さんと一緒に「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」を披露してほしいとお願いされたことがあったので、いろんな偶然が重なってちょっとびっくりしています。

――そういう数々の訃報が重なって、レクイエム的なテイストの「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」が生まれた?

麻倉:というより、「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」のカラオケ(バックトラック)を使えなかったことのほうが大きくて。とある宝石の展示会でディナーショーをすることになって、そこで「カラオケは使えないんだけど『ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO』を歌ってほしい」と言われて、どうしたものかと悩んでいたんです。ちょうどライブのリハーサルの前後だったと思うんですけど、長谷川さんに「どうしても『ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO』を歌ってほしいとお願いされているんだけど、どうしたらいいと思いますか?」と投げかけたら、ちょっと考えてから「こんなのはどうだろうか」と、ちょっとスパニッシュ風のあのアコースティクバージョンのアイデアを提示していただいて。「ああ、これなら私と長谷川さんだけで完結できる!」ということで、そのディナーショーで披露したら拍手喝采だったんです。あと、私はクルージングのお仕事も多くいただいているんですけど、そのクルージングではステージを2回披露するんですね。なので、「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO」もそれぞれパターンを変えて披露することができるようになって、自分自身も「こういう表現もできるんだ」と自信に繋がった。「せっかくなら、このアコースティックバージョンもいつか形として残しておきたいな」と思うようになり、ずっとタイミングを見計らっていたんですが、今回ディレクターさんに相談したら「ぜひやりましょう」と。長谷川さんにも相談して「僕も作品として残るのは嬉しい」とおっしゃってくださったので、満を持して収録することができました。

――アコースティックアレンジに合わせて、麻倉さんの歌も原曲とはまた違った熱量を放っている。そういった表現方法の違いによって、歌詞の響き方もこんなにも変わるんだと驚きました。

麻倉:私自身も、アレンジが変わることで「実はこういうことを歌っている曲だったのかな」と感じることも多くて。ひとつの楽曲をアレンジを変えて歌うというのも、新たな発見ができるいいきっかけになるんだなという気づきにもなりました。

――『My Soul 〜45th Anniversary』というアルバムを締めくくるのは、スペシャルトラックとして収録されたデビュー曲「ミスティ・トワイライト」。歌声に初々しさこそあるものの、音楽性的には新録楽曲と並んでも何ら違和感がありません。

麻倉:このアルバムのレコーディング中に大野さんがお亡くなりになられて、非常にショックを受けたんです。それもあって、このアルバムで「ミスティ・トワイライト」を取り上げようかどうか迷ったんですけど、次があるかどうかわからないにしても、また違ったやり方ができるかもしれないと思い、ディレクターさんに「何らかの形で『ミスティ・トワイライト』を入れることは可能ですか?」と打診したら、「元の音源を入れることなら可能」とおっしゃってくださったので、こういう形で入れさせていただきました。実際、完成したアルバムを聴いてみたら、45年前の音源ながらもまったく違和感のない流れになっていたので、ホッとしました。

――これまでとこれからを歌った新曲「My Soul」を中心に、45年前当時の麻倉さんには大人びた作品だった「ミスティ・トワイライト」や、長きにわたり歌い繋ぐなかで新たなアレンジが加わった「ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO(アコースティックギターver.)」、そしてご自身のルーツとなるような昭和の名曲たちのカバーといった楽曲たちが繋がった。この『My Soul 〜45th Anniversary』というアルバムは、これまで経験してきたことがすべて無駄ではなかったと証明する一枚になったと思います。

麻倉:ありがとうございます。今までいろんな方向に散っていた数々の点が、こうしてすべて結ばれたことで、ここからまた新たなスタートが切れるんじゃないかと、あらためて感じています。なので、過去を振り返るというよりも「ここから先がまだあるんだよ」っていうことを感じていただけると嬉しいです。

――ここまでくると、5年後の50周年がどうなっているのかも楽しみになってきます。

麻倉:40周年から45周年への5年が重く感じられたんだから、ここからの5年はさらに重いものになるんでしょうかね(笑)。私自身、「あと5年も歌えるんだろうか」と思う瞬間もあるんですけど、50周年を迎えられた真代さんは悪性リンパ腫を克服して、私より元気に動き回っている。そんな先輩たちが背中を見せてくれているからこそ、私も安心して歌い続けられているんだなと思うので、まずは健康に気をつけながら、1日でも長く歌っていけたらなと思います。

■リリース情報
『My Soul ~45th Anniversary』
発売中

販売URL:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICS-4252/
配信URL:https://king-records.lnk.to/MySoul_asakuramiki

3,300円(税込)/KICS-4252

<収録内容>
01. My Soul(作詞:富田京子/作曲:吉野ユウヤ)
02. たそがれマイ・ラブ(作詞:阿久 悠/作曲:筒美京平)
03. M(作詞:富田京子/作曲:奥居 香)
04. フレンズ with高橋洋子(作詞:Nokko/作曲:土橋安騎夫)
05. ヒーロー HOLD OUT FOR A HERO (アコースティックギターver.)(作詞:Dean Pitchford/作曲:Jim Steinman/訳詞:売野雅勇)
06. アデュー(作詞・作曲:庄野真代)
07. 星影の小径 withザ・ハモーレ・エ・カンターレ(作詞:矢野 亮/作曲:利根一郎)
08. シクラメンのかほり(作詞・作曲:小椋 佳)
09. テネシー・ワルツ(作詞:Pee Wee King/作曲:Redd Stewart/訳詞:和田寿三)
10. My Soul(Instrumental)(スペシャル・トラック)
11. ミスティ・トワイライト(1981年8月21日オリジナル録音)(作詞:竜 真知子/作・編曲:大野雄二)

麻倉未稀 オフィシャルサイト:https://tsukiakari.co.jp/moon/artist-麻倉未稀/
X:https://x.com/mikiasakura821
Instagram:https://www.instagram.com/asakura.miki/
Blog:https://ameblo.jp/mikiasakura/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる